KaiV53は一体どんな星の組み合わせか?
昨日の続きです。
mei/nekoさんがブログに、OさんがFBにコメントをしてくださいました。お二人とも、一体この星はどんな星だろうか?と疑問を投げかけておられます。
現在わかっていることをまとめてみます。
この星の周期は発見した晩、一晩で主極小と副極小両方が受かっているので0.55日というのは確実です。
そして位相図も2回の観測からできたものです。ただし、ASASSN-16msの観測の副産物で、clearフィルターの観測です。なので、例えば極小の深さなどはVの場合とはかなり異なる可能性はあります。しかし、食外がまっ平らというのはおそらくVで観測しても違わないのではないかと思います。
しっかりした観測データが出揃えばPhoebeでモデルを探せば出来るかもしれませんね。観測データ待ちということでしょうか。
VizieRで見つかったことは、NOMADには16.590B 16.040Vと記載されていること、それからカタログによって数値はかなりばらつきますが、固有運動は小さく一桁masの程度ということ、2MASSではJ-K=0.802程度、Gaiaでのパララックスデータは載っていないので距離はわからない、などです。B-VやJ-Kからすると特に青いとか赤いということはなさそうですね。
皆様のご意見をお待ちしております。
あ、AAVSOの変光星分類の中でEAの周期の範囲の下限は0.2日(!)と書いてありました。
そこでVSXでカシオペア座で周期0.2-0.5日の変光星を探させたらかなり見つかり驚いています。
このような検索の仕方は以前書いたかもしれませんが、VSXのSearchの画面で下の方のmoreを一回やって出た画面でもう一度moreをクリックするといろんな要素を入れて検索できるようになるので、今回はConstellation、Type、周期の上限と下限をいれてsearchさせました。
特に1SWASP J011732.10+525204.9というのは確かに0.22日の周期!VSXのサイトでPhase diagramを見るとかなりEB的な位相図でこれがEA?という印象ですが。。。
https://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=286481
この星はこの論文に出ているそうです。
http://adsabs.harvard.edu/abs/2012arXiv1210.6765L
他のGSC 04014-00614とVSX J011746.6+570610の位相図もそれぞれのページでみられ、VSX J0117...の位相図も食外がかなり平らですがちょっと変わった凹みがあります。(これだけスキャッターがあると実線のカーブがリアルかどうかというところですが。。)
一年前に見つけた新変光星 KaiV53 について
この続きです。天気が良ければ、この星をVフィルターで観測して、Vmagを出せると思うのですが。。。
今日は久しぶりに日中晴れたので夕方早速観測の準備をし、星の導入までやったのですが、その頃に霧がやってきて、ディスプレイ上の星はフォーカスモードでフレームが変わるたびに少なくなり最後には一面グレーとなってしまいました。
その代わりというわけではないのですが、この星のASAS-SNのデータをダウンロードしました。さすがに16等台だとASAS-SNにも厳しいらしく、きれいな位相図はできませんが、周期は観測期間が長いのでかなり正確に出せました。
観測データと組んだ位相図です。
周期0.55日ぐらいでもこんなに典型的なEAがあるものですね。反射効果も全然見られません。食外がまっ平らです。
周期未知の食変光星V578 Casを観測
ミュンヘンに出かける前にこの食変光星について書きました。
この食変光星の周期が1.011日余りと判明し、22日から23日にかけての夜に極小があるようなので旅行前でしたが幸い夜晴れたので観測してみました。一晩中晴れたのですが、残念ながら極小時刻には星は物陰に隠れてしまいました。
ASAS-SNのデータと組み合わせた位相図です。
この変光星の南東14秒のところに15等星があって、ASAS-SNのデータに光が混入しています。(ASAS-SNの場合17秒ぐらいが分離できる限度だそうです。)一応その15等星の光度でdeblendしてみたのですが、観測データよりそれでもまだ明るすぎますね。極小時の光度は17等台になりそうです。周期が一日あまりなのでスイスでは今月極小は観測できません。
この晩の観測フレームから一つDSCTタイプの新変光星が見つかりました。KaiV76
ドイツ博物館 おまけ
今までのテーマに入らなかったり関係ないものでちょっと面白かったものを紹介してみます。
我らの銀河系の中心にあると言われるブラックホールの周囲の星の軌道を立体的に見せてくれる模型です。
真ん中の十字にブラックホールがあります。
ドイツで戦後電波望遠鏡の観測が始まった当時、電波望遠鏡は経緯台式で、対象物の動きを追うのにコンピュータはまだなく、どんどん変化する方位と高度を計算するためにアナログ計算機を作ったのだそうです。
白色矮星の周囲に出来る降着円盤がどのように出来るかのシュミレーションをヴィデオで見せている。
こちらは重力崩壊タイプの超新星のシュミレーション。
天文の部門ではなくガラス部門に、我々馴染みの名前の人たちのことが書かれていました。カール・ツアイス、エルンスト・アッベです。
それにガラス製造のショット。
ショットのZerodurのガラスが温度変化にほとんど影響されないという実験。左が普通のガラス、右がZerodur。現在温度は100度まで上げられていて、左のガラスはニュートンリングが大きく変わったのに、右の方は平面のまま。
光学ガラスの塊からレンズの大きさまで切って行く様子。
この近くに光学ガラスと普通のガラスでできた約1mの長さの円柱がありました。普通のガラスだと1mの厚さになると光をかなり吸収してしまいますが、光学ガラスは見事に光を良く通します。
全く天文に関係ないのですが、計算機の部門に第2次大戦中のドイツのかの有名な暗号機、エニグマが展示されていました。一時暗号解読に随分凝った時期があり、本物のエニグマにお目にかかれて感激でした。
これでドイツ博物館についての報告ブログはおしまいです。また星について書きましょう。
ドイツ博物館 スペクトル関係
今年はフラウンホーファーが太陽のスペクトル中に暗線を発見公開して200年だそうで、それの特別展がちょうど始まったところでした。
Deutsches Museum: Geheimcode der Sterne
彼が作った幾つものプリズムです。当時はもちろんカラー写真はなく、暗線と背景の色は手書きだそうです。綺麗に色を出すものですね。
プリズムばかりではなく、回折格子もいろいろ工夫して作っています。上の方のものはネジを並行に並べて細い針金を巻いて作ったもの。下の方のガラス製では、ガラスの表面に金箔をはり、3mmに1000の線を引いているそうです。
恒星のスペクトルの観測となると、もう少し後になります。
1836年にミュンヘンのJohann Lamontと言う天文学者が恒星のスペクトルを眼視で観測してスペクトルのスケッチを残しています。アークトゥルスと書いてあります。
この記事は今回が世界初公開だそうです。彼は1851年に恒星のスペクトルを観測することによって星の視線速度を将来決定できるだろうと予言したそうです。
銀河のスペクトルというとハッブルの業績が浮かびますが、ここに展示されているハッブルの著書の赤方偏移についてのページの上から2番めのスペクトルの乾板が顕微鏡にセットされていて、覗くことができます。こんなに小さな乾板だったのですね。
これは1924年頃までボンで観測していたキュストナーと彼の装置です。Uの字型の装置の末端にやはり小さな乾板が見えます。
1934年-35年のヘルクレス座の新星のスペクトルが展示されていました。
スペクトルと言えばもちろんピッカリングの分類などが説明されています。
有名なピッカリングのハーレムが右上に見られます。
昨日書いたように、見学者に自分で考えてもらうという企画がここにもありました。
左側はスペクトルの分類のそれぞれの例、右側はいろいろな星のスペクトル。どの星がどの分類になるかボタンを押すと、当たりとかハズレとか出ます。二つぐらいハズレだった。。。。
こちらは太陽のスペクトル。
下が実際の太陽のスペクトルで、上はクロムの線。上は左右に計算尺のようにうごかせますが、太陽のスペクトルでクロムの線がどこにあるか移動して見つけろとのこと。一応こんな風にやってみたけど、あってたのかな?
太陽黒点のゼーマン効果の説明があって、磁力を掛けたときと取った時にスペクトルがわかれたり戻ったりするのを見せてくれる装置です。
まだまだ山ほどいろいろの展示物があるのですが、今日のところはこのへんで。
ドイツ博物館 変光星関係
この博物館で面白いのは見学者に自分で何かを判断させるという企画があちこちで見られることです。
星の明るさについてのところです。
上のピンクのLEDは明るさが同じ量ずつ明るくなっていて、下のピンクのLEDは同じ比ずつ明るくなっているが目には下の方がそれぞれの間の差が等しく感じられるという説明があります。
そしてさらに下の大きな黄色い円で一番右のが強さ100とすると一番左は16であるが、その丁度中間の明るさにダイアルを調整して見てくださいとのこと。調整してからボタンを押すと、それがどのくらいあっているか数値が出ると言う装置です。いわば変光星の光階法の練習みたいなものですね。
ちなみに星の光度の測定精度の歴史です。写真が小さくて読めるかどうか。。。0.001等が一番上ですが、今のケプラーなどは測光精度がmyumagの桁のようですね。
ドイツ語での記事です。
1.アルゲランダーの眼視観測の精度が0.2等。
2.ツェルナー、ピッカリングの眼視観測の精度が0.1等
3.シュヴァルツシルトの写真測光の精度が0.05等
4.グートニクやステビンスの光電測光の精度が0.01等
5.バルウィグの多重バンドスペクトル測光 0.001等
ケフェイドの説明のところです。
もちろんLeavitt女史の写真は欠かせません。黄色いボタンを押すとM33の中のケフェイド2つ(LED)が明るくなったり暗くなったりします。周期は二つで異なり、一秒が実際の5日分に相当することになっています。自分の時計でそれぞれの周期を出し一秒5日としてそれぞれの本当の周期を求め、それぞれの見かけの光度がわかっているとして下の方にあるグラフからM33までの距離を求めることができます。実際に試したら230万光年と出ました!
皆熱心にやってみるので、グラフが穴だらけになっていて良く読み取れないほど。グラフにはマゼラン雲の星が基準として載っています。上の写真でM33の右にあるのはNGC2430。同じように二つ変光星(LED)があります。
二重星や食変光星についての説明。U Cep
変光星をどのように見つけるかの説明にブリンクコンパレータ。X Octの写真乾板が載せられていて覗くと明るさの変化が見られます。ツアイス社製。
アルゴルの模型。1890年にポツダムのHermann Carl Vogelという天文学者が長年の測光、スペクトル観測から作り上げたもの。
明日はスペクトル関係の展示について書きましょう。
ドイツ博物館見学
昨日書いたように4階から7階まで天文に関するものがあります。(階はヨーロッパでは地上階、1階、2階と言い、例えば日本式4階は説明図などで3階となっていますが、ここでは日本式で書いておきます。)
4階の中央には沢山の観測器械、観測方法などについて展示されています。どうしたわけか全体に暗い照明で写真を撮るのに条件は悪いです。(博物館入り口で尋ねた所、写真撮影は自由にできます。)多くのものはガラス容器の中に展示されていてフラッシュを使うと反射してうまく撮影できません。
星の位置観測のための器械、古いものから近代のものまで。
大きな扇状のものは電波望遠鏡の一部です。
とても精巧にできたハーシェルの大望遠鏡の模型です。細かい作動装置などまで良くできています。
バンベルク天文台で使われていたシュミットカメラ。口径36cm、球面主鏡44cmはシュミットの制作1930年頃。(補正レンズはベルリンのオールミュラー制作1954/55年)
シュミットがテストを行っている所。(彼は確か片腕だったと思います。。。)
シュミット制作のシュミットカメラ第一号。1930年ハンブルクにて。後に1962年から南アフリカのボイデン天文台で使われた。36cm補正レンズ、44cm球面主鏡。
この部屋ではなく階段の踊り場になんと宇宙背景輻射を観測した設備の一部が展示されています。(コピーかと思ったのですが、器械の中を見ると古びていて本物くさい。)
中央の光るビンのようなところがreference sourceで液体ヘリウムで冷やされており、右の四角い装置がメーザ増幅器だそうです。
ペンジアスがガモフに送った論文に対してガモフが書いた返事。
ここにあった解説によると1965年にAstrophysical Journalに書いた論文中でペンジアス達は背景輻射の予想に関してRobert Dickeやプリンストンの仲間の論文(同誌に掲載された)だけを引用していたので、ガモフがもっと早くにAlpherやHermannが1948年に背景輻射の温度を5度と計算していたとこの手紙で注意しています。
手紙の最後にRobert Dickeの名を使って「Thus you see the world did not start with almighty Dicke」と皮肉っているようです。
ちなみにWMAP Sondeのオリジナル部品も展示されています。