muttenz's blog

スイス星空だより

NSVS13995739 について

NSVS13995739はvsolj-obsで山本さんが投稿なさってからちょっと話題になった星です。

これはNSVSのサーヴェーで見つかった変光星で清田さんが書いておられるように同じ星が別のID、NSVS16919745でも観測されています。両観測データを見るとかなりゆっくりとした変動で、変動幅も1等にも満たない狭いものです。周期は少なくとも200日以上というのもデータからわかります。

とりあえず位相図です。

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NSVSの2組のデータから出した周期218.6日で作った位相図。

そして肝心なこの星の座標ですが、NSVSには

NSVS16919745は19 16 01.40 -07 13 49.6

NSVS13995739は19 16 01.36 -07 13 47.6

とあり、VSXは下の方、NSVS13995739の座標19 16 01.36 -07 13 47.6をそのまま記載しています。

Sebastian Oteroの話ではNSVSの座標はかなり粗いのでその座標に星がないこともありうるとのことです。この座標近辺で11等台の星はGSC 05142-02740しかないので、NSVS13995739 = NSVS16919745 = GSC 05142-02740と同定されます。

したがってその座標は19 16 01.288 -07 13 32.51 (Gaia DR2) となりました。

11等台の星ならばKWSにデータがあるだろうとダウンロードし、PDMで周期を求めたら206.9日が出ました。

NSVSとKWSのデータがうまく重なる周期を探すと少し短い205日が良さそうです。

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これで、この星はミラタイプではなく、山本さんが発見された星とは全く異なる星と決まりました。しかし、これはなんのタイプなのだろう?ASAS-SN VSDBにはROTと出ていますが。

ついでにASAS-SN VSDBのデータですが、これは上の2つのサーヴェーに比べてどうしてかひどく変動幅が狭いです。上の位相図にさらに書き込むとこうなります。

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変動があまり見えませんが、単独の位相図にするとわかりやすくなります。

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これら3つのサーヴェーのデータはいずれもすぐ近く、約8秒離れたところにある13等星の光が混入しているので、deblendしなければなりませんがまだやってありません。

UGEMとKWSの測光値を比較してみた 続き

3月31日に撮影した画像でも同じようにやってみました。

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24個の変光星のうち、6つで、UGEM-KWSの絶対値が0.15を超えました。(右の列でアステリクスがついている星。)あとの18個では差はそれ以下。そのうち15個では差は0.1等以下です!

10枚のフレームで写っている場合と写っていないケースが変光星ごとに違うのが少々難点です。(星像があっても検出してくれないのが不思議)

差が大きくなった理由は全部はわかりませんが、フレームの縁ギリギリのケースが2つあり、その場合に結果が悪くなるのは収差や周辺減光などを考えれば当然かも知れません。(下の画像を見てください。星像は特に目立って悪くはありません!かなり縁に近いにもかかわらず成績の良いのもあります。)

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左から2番めと、一番右の星がKWSとの光度差が大きい変光星。一番左のは縁に近いにもかかわらず差が0.087と0.1等以下。

UGEMとKWSの測光値を比較してみた

先日来キャノンにズームレンズ28mm-55mmをつけて撮影した画像をUGEMを使って測光することを試しています。撮影はノーガイドですが赤道儀に載せて55mmで30秒露出。

同じ日のKWSのV測光値と比較してみました。時差はあります。

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一番右にその測光値の差が記載されていますが、一番大きくて0.27、かなりの星で0.1等以下にもなっていて、この機材とやり方で観測するのもまんざら悪くなさそうに思えます。

UGEMでは三色のうちGを取り出してFITSファイルにしたものを測光してもらいました。ですからオフィシャルにはcGというバンドになるわけですが、Vに本当にかなり近いです。推定極限光度は約11等でした。

追記

キャノンでの撮影はそれぞれ10回行い、UGEMでの測光の平均値です。

UGEMをいろいろと試みてみた 続き 食変光星 KW Hya

UGEMで測光した値がどのくらいあっているか調べるにあたり思いついたのは前原さんがやっておられるKWSです。

UGEMで得られた値とKWSでの最新データ、3月26日の値といろいろな変光星で比較してみました。星により程度の差がありますが、ほぼ0.1等程度の違いなのでこれならば行けそうです。その比較の際にKWSの最近のデータでちょっと暗いデータがあったので、この星のタイプは何と見たらEAです。そこで、KWSの全データをダウンロードして周期を探したら7.75032日とでました。

VSXにある元期を使って位相図を作成。

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第一極小がフェーズ0.0から外れてしまいます。VSXのやらクラカウなどの周期をを試しましたが、GCVSの周期が一番綺麗な位相図になるので、それをとりあえず採用。元期にKWSの一番暗いデータの時刻を使うことにしました。

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第二極小のフェーズは0.464で、0.5から外れています!楕円軌道ですね。

VSXにあるReferenceの一つはIBVS No.2015、 1981年9月7日で、発見の経緯が書かれています。

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2つ不思議なことが書いてあります。赤の下線の箇所。

まず第二極小のフェーズは0.54となっています。それから名はKM Hyaと名付けられたとあります。(名はおそらく後でさらに変更されたのではないでしょうか)

フェーズはこれが正しければ、現在の0.46とは全く異なり、明らかなapsidal motionとなります。ただちょっと気になるのは0.46と0.54はちょうど0.5を軸に対称なので、何らかの間違いがあるのではないかと。。

インターネットの画像検索でこのようなのが見つかっているのです。

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この位相図では第二極小はKWSと同じ0.46にあります。これが1984年だろうか?それなら上記のIBVSのたった3年あとです。

 

UGEMをいろいろと試みてみた  続き

http://muttenz.hatenablog.com/entry/2019/03/24/052818

の続きです。

あの時は10cm反射にキャノンの組み合わせで、食変光星を観測してみたのですが、

10cmでの食変光星の観測は出てくる画像の大きさがすごいです。1時間半もやったら数GBになってしまう。

今度はキャノンについてきたズームレンズ18mm-55mmで撮影してUGEMで測光を試みました。以前石垣島で18mmでノーガイドで撮影した画像をUGEMで試みてうまく整約できずがっくり来ましたが、55mmでProcyon付近を撮影したものは、整約したらちゃんとできました。しかし、出てきた焦点距離はなんと半分の27ミリです!それはまあ、どうでもよくて、整約できることが肝心です。画像をUGEMに測光をしてもらうとずらずらっと次から次へといくつもの変光星の測光の様子が出てきます。今まで見たこともないものばかり。大変に感激しました。

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残念ながらピントがあっていなくてドーナッツ状になっています。。

この分ならやってみる価値はあるかもしれないと、カメラとミードのファインダーを一緒にして反射望遠鏡の代わりに赤道儀に載せる板を作りました。そして昨晩またProcyonから撮影を始め、2分おきに30秒露光で10枚、その後は赤経で30分東へずらして同じように。全部で4箇所の撮影をしました。それを今日UGEMで整約。結果はなかなか良い感じです。比較のために前原さんのKWSで該当する変光星の最近のデータを見てみましたが、ほぼ0.1等以下の違いでした。一つのフレームで大体30個の変光星が受かっています。(varlistのリストにもよりますが、30秒露光で約10等どまりでした。)

その比較の最中に一つの食変光星に行き当たりました。KW Hyaという明るい食変光星です。

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赤い枠で囲まれているのがHyaKW

この星のKWSの測光データが面白いです。vsolj-obsを見たら、もうい~っぱいの観測データがありますね。この星をご存知の方はきっと多いことと思いますが、私には全くの初対面でした。この続きはまた明日。。

2月に見つけた新変光星、KaiV93をVSXに登録

もう何度かブログにこの食変光星、KaiV93について書きましたが、ようやくVSXに登録できました。

先日、セバスチャンに登録の際のprimary nameについて、VSXを見ているといろんな名前の付け方があるようだけれど規則があるのか?と尋ねたら、primary nameはどちらにしても、正式名がつくまでの臨時の名なので、規則はないとのこと。私はずっとすでに星表にある名を、中でも主に2MASS JXXXXXX...を使っていましたが、KaiVをprimary nameにしても良いとのことなので、今回からKaiV93で登録しました。

VSXのページです。

https://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=686893

位相図はこれ。

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