muttenz's blog

スイス星空だより

ASAS111340+1749.1の観測結果の続きです。

KatさんとMeinekoさんがいろいろ考えて下さって、とにかくこの星の色がRRcにしては赤すぎるという点が問題だとのことです。

Katさん、Meinekoさん、ありがとうございます!

うっかり忘れていたのですが、APASSでこの変光星のデータをみると

http://www.aavso.org/cgi-bin/apass_download.pl?ra=11+13+40.25&dec=17+49+02&radius=0.005&outtype=0

B 13.713 V 13.499

(B-V)が0.214!     (もちろん、変光星なので、それぞれのエラーは大きいのですが。)

 

というわけで、僕の観測をAPASSデータをベースとして見直してみることにしました。

なんと言っても基本となる比較星、TYC 1437-2414のV、Rc、Icの値が問題です。

B 12.862  V 11.719  Rc 11.101  Ic 10.540

(使用したデータはGuide 9.0がBTとVT、BT 13.196 VT 11.845から算出した値です。この星とにかく赤いのです。)

VizieRで他のカタログを見ると

ASCC-2.5 V3         B 12.869  V 11.713

The NOMAD-1 Catalog   B  12.871  V 11.723

Teff and metallicities for Tycho-2 stars(Ammons+ ,2006) B 13.196  V11.845

と、どれも(B-V)が1より大きく赤いです。(UCAC4は後述のAPASSのデータを使っているそうです。)

でも、APASSでのTYC 1437-2414のデータは

http://www.aavso.org/cgi-bin/apass_download.pl?ra=11+14+00.39&dec=17+55+57.7&radius=0.005&outtype=0

B 12.698 V 12.044 g'12.279 r' 11.876 i' 11.699

これだと(B-V)は0.654!

困ったことに、Rc、Icの値がないと、観測データから変光星のRcとIcは計算できない。

そこで、主系列星対象ですが、

http://www.sdss.org/dr7/algorithms/sdssUBVRITransform.html#Lupton2005

にある変換式

UBVRcIc -> u'g'r'i'z'
=====================

Main Sequence Stars
    u'-g'  =    1.101(+/-0.004)*(U-B) + 0.358(+/-0.004)*(B-V) + 0.971
    g'-r'  =    0.278(+/-0.016)*(B-V) + 1.321(+/-0.030)*(V-Rc) - 0.219
    r'-i'  =    1.070(+/-0.009)*(Rc-Ic) - 0.228
    r'-z'  =    1.607(+/-0.012)*(Rc-Ic) - 0.371

を変形して、

V-Rc={ (g' - r' +0.219) - 0.278 * (B-V) } / 1.321

Rc-Ic=(r'-i'+0.228)/1.070

を用いて比較星のRc、Icを求めると 

Rc mag = 11.711  Ic mag = 11.332

 

昨日は比較星の光度をそれぞれ V mag = 11.719, Rc mag = 11.101, Ic mag = 10.540

として 変光星の V、Rc、Icを求めていました。

今回のAPASSデータだと      V mag = 12.044, Rc mag = 11.711, Ic mag = 11.322

なので、

TYCの(V-Rc)とAPASSの(V-Rc)の差、 (11.719-11.101)-(12.044-11.711)=0.285  

TYCの(Rc-Ic)-APASSの(Rc-Ic)の差、 (11.101-10.540)-(11.711-11.322)=0.182

の分、V-Rc、Rc-Icはそれぞれ値がずれて、新しいグラフはこうなりました。

f:id:muttenz:20130509173917j:plain

f:id:muttenz:20130509174019j:plain

これで見ると

V-Rc    0.23--->0.15

Rc-Ic    0.27--->0.2

V-Ic     0.5---->0.35

となり、KatさんがVSOLJ11533で書いて下さった次のページを参照すると

http://www.stsci.edu/~inr/intrins.html

スペクトルタイプが極小から増光にかけて

V-RcではF7.0--->F2.0

V-IcではF8.0--->F2.0

となるようです。

APASSの値を使用するとRRcという結論。

 

昨日はよくよく見なかったのですが、KatさんがVSOLJ11526で書いて下さった、VizieRのリンクでみると、 

http://vizier.u-strasbg.fr/cgi-bin/VizieR-5?-ref=VIZ51887df811e4&-out.add=.&-source=VI/135/table16&recno=2167899

変光星の光度は Vfmag 14.037 Rfmag 13.51 Ifmag 13.07 とあり、

V-Rは0.527、R-I は0.44となり、観測データから得た昨日の値と非常に近い。

TYCのデータをベースにするとRRcにしては、やはり赤すぎるというところでしょうか?

 

それにしても、比較星の色指数がプロのカタログでこんなに違うということは、絶対測光がどんなに難しいことなのかと思います。