muttenz's blog

スイス星空だより

OQ Gemは楕円軌道か?

前回の食変光星、OT Lacは位相図をみても見事に楕円軌道ですね。

OQ Gemの場合、ケプラーのデータが出てくるまではその可能性はかなりあると思っていました。理由は、

1.Frankが観測した二つの極小(下の位相図中Vmag 15.1上のピンク色の点)のうち、一つはどうみても第一極小にはなりえず、フェーズ0.5からも外れている。

2.私の観測で第二極小がフェーズ0.5より左にあるように見える。

からです。

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ところがケプラーのデータを見つけて位相図を作ったら、第二極小は見事にフェーズ0.5にピッタリと載っています。これを見る限りではもう楕円軌道には到底思えません。

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唯一の例外は、あまりありえないことですが、ケプラーが観測した時はちょうど連星の長軸が地球方向を向いていた。(正確には短軸が天球面上にあった、ですか?)

この可能性を検証してみようと思います。

先日OT Lacの離心率eと近星点離角omegaを大雑把に求める式がありましたね。

e*cos(omega) = Pi/2*[(fi 2 - fi 1) - 0.5]   = a

e*sin(omega) = (w 2 - w 1) / (w 2 + w 1) = b

ケプラーの観測時にはfi1は第一極小なので当然0で、第二極小はフェーズ0.5に載ってましたからfi 2 は0.5で、したがってaの値はゼロです。もしeがゼロではなかったとすると、cos(omega)がゼロでなければならず、その場合はsin(omega) = +1 or -1となります。

なので、第一極小、第二極小の食の幅、w1 w2を測定すればeが求められるかもしれません。

やってみました。

Phoebeのプロットを使って連星の接触のフェーズを第一極小と第二極小で目視で探しました。図ではこんなです。

これは第一極小の食の終わりのフェーズ。

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これは第二極小の食の開始のフェーズ。

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フェーズ0.0と0.5からそれぞれ見事に0.06044離れていました。まあ、この場合またトートロジー的なもので、こうなって当たり前なのですね。。Phoebeの解析で離心率を0にしてあるので当然といえば当然。ここではたと気がついたのは円軌道であれば連星の大きさが違っていても基本的には第一極小、第二極小の食の継続時間はおなじになりますね。(ただ第二極小がわずかな減光だと食の開始や終了がはっきりとはわかりらず違っている印象を受けますが。。)

それでは、実際のケプラーのライトカーブで見てみましょう。

第一極小の食の開始

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第二極小の食の開始

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縦軸はかなりちがう目盛りになっています。目視ですが、食の開始のフェーズは食の中心(0.0と0.5)からほぼ同じマイナス0.058ですね。要するに食の継続時間がほぼ同じということです。(Phoebeで見つけた接触開始のフェーズは測光上はわからないようです。)

ということで、a b 共にゼロ。したがってeもゼロ。

この星を調べ始めてからずーっと楕円軌道の可能性を捨てずに色々考えてみたのですが、これで楕円軌道はありえないと結論付けることになりました。

そうすると、周期が変化しているように見えるのは、楕円軌道のせいではなく、別の原因という事になりました。なぜFrankの一つの極小がフェーズ0.5にのらないのかは説明できません。

ちなみに上の二つの図でで食の前の(直線)部分のライトカーブに定規を当てると食の開始がわかりやすくなります。