Canon EOS Kiss X7 のリニアリティーについて (1)
今年春から10cmのニュートン反射にCanon EOS Kiss X7をつけて食変光星の極小を観測し始めました。色々と問題が生じましたがなんとかデータとして使えそうな観測になってきました。
ところが、かなり重大な問題が起こりました。
ことの起こりは今年11月12日のANDRTの観測についてのNgaさんのコメントでした。
その観測報告のライトカーブはこのようでした。
このデータをVSOLJに報告したのですが、Ngaさんが「食外の光度が食の前と後で異なりますね」、とコメントを下さったのです。確かに食の前は食の後より少し暗く、ライトカーブ全体がなにか歪んでいます。念の為にKWSのデータをダウンロードして位相図を作ってみました。
食外の光度は、少し反射効果が見えるぐらいで、ほぼ一定。食のカーブも対称で、傾いたりしていません。
そこで、AIP4WINで画像を測光しなおしたら歪みがほぼなくなったのでそれを再報告しました。
このあたりのやり取りをUGEMの作者の金田さんがご覧になって、私にその時の観測フレームを解析したいので観測開始時と終了時のフレームをいくつか送ってほしいと連絡くださいました。お送りしてしばらくしてこの歪みの原因が分かったとのメールが来ました。
この観測中にそれぞれの星のフラックスがかなり減っているがその減り方が全部の星で一様という訳ではなく、明るい星は小さく(前後の比、約1.7)、暗い星は大きい(前後の比、約2.1)。それぞれの星のピーク値が2万を超える辺りにその境界があるようで、明るい星は観測開始頃に暗めに測光されたために歪が生じたと考えられる。
なお、AIP4WINの測光の場合は差測光で、比較星も明るい星を選んでいるために、変光星も比較星も同じ様に食の前は暗めの値になり、影響は相殺されてライトカーブの歪が生じなかった。
と詳しいデータをもとに説明をしてくださいました。ということで、ピーク値が2万あたりを超えるとリニアリティが破綻しているかもしれないという結論になりました。
UGEMの説明には、ある星の画像が飽和しているか否かの境をデジカメの場合はピーク値が約26000あたりに設定するとあったのですが、この分だと2万あたりにしなければならないかもしれません。そうすると観測出来る星の範囲がかなり狭められてしまうことになります。
ここで注意しておきたいのですが、UGEMの測光結果とAIP4WINの測光結果が異なるのはその測光のプロセスが全く違うからです。UGEMではそれぞれのフレームで検出された全部の星のフラックスとその星表の光度を調べて、それぞれのフレームで変光星のフラックスがどのあたりの光度に相当するかを算出していると理解しています。一方でAIP4WINの場合は純粋に変光星、比較星のアパーチャー内のフラックス値からスカイを引いて差光度を算出しているだけです。
この続きは次回。