muttenz's blog

スイス星空だより

シジュウカラの家族 続き

それから約3週間、玄関脇の木蓮にかけた巣箱にシジュウカラの夫婦が入って子育てをしていました。庭のテラスでピーナッツをもらうと、すぐそばのライラックの枝の上でまずそれをつついて細かくし、口の中に含んで玄関の方に飛んでいき、巣箱の中のひな鳥たちに分配します。分配し終わるとすぐにまたテラスに飛んできて、、、と一日に何度も繰り返しました。
巣箱の中から始めの頃はかすかに「チチチ」と聞こえていたのが、日に日にどんどん大きくなってきます。
2週目の週末には、「ジェジェジェジェ」という危険を知らせる親鳥の鋭い声が聞こえたので、何事かと見たらなんと猫が木蓮に登っています。すぐにシッと追い散らしたのですが、それまではそんな危険が襲って来るとは思ってもいませんでした。

その後も例の猫が木の上に登っていた事があったのですが、かねてから用意しておいた日本製の特別の水鉄砲で見事に猫に水をかけてやれ、少々溜飲を下げることができました。

3週もたったころ、もうそろそろ巣立つだろうか、一度巣立つところを見てみたいと楽しみにしていました。(気が付かないうちに巣立ったことがそれまで何度もあったので。)

今日のちょうど一年前の6月25日は朝かなり雨が降っていました。(天気が悪い時に巣立つという風に聞いたことがありました。)が、昼過ぎには上がって、親鳥は相変わらず餌をせっせと運んでいました。これなら今日も巣立ちはまだかなと思っていたのです。
ところが午後3時ころに家内が庭仕事をしていたらひな鳥が巣立ったのに気が付き、知らせてくれて、娘も一緒に3人で見ていたら、3羽の雛鳥が親と一緒に木から木へとちょっとずつ飛んでいます。ところが、巣箱の方を見ると、一羽だけまだ飛び立つ決心がつかないのが巣箱からちょっとだけ顔を出していました。

これがその出遅れた雛鳥の写真。

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ようやく巣箱から出たけどくたびれたのか、枝で休んでいるのが次の写真。くちばしがまだ黄色です。これでは比較するものがないのでよくわからないですが、小さいですヨー。

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その直後に僕が見ている目の前で悲劇が起こりました。最初に巣立った3羽のひな鳥のうちの一羽が、飛んでいるところをカラスに捕まってしまったのです。屋根の上でカラスは雛鳥たちがよたよたと飛ぶのを待ち構えていて、さっと襲ったのです。
雛鳥をくちばしにくわえたカラスを親鳥が悲しげに必死に追っかけましたがもうどうしようもありません。そのうちカラスはゆうゆうと近所の家の屋根の上でひな鳥を食べ始め、むしられた羽毛が風に流されて飛んでいくのが本当に哀れでした。
自然のおきてとはいえ、ようやく外界に出た途端に、わずか3週間の命で殺されてしまったのは本当に可哀想です。我々もショックでしばし呆然としていました。

一羽減ったものの5羽家族は連れ立ってあちこちそれから飛び回っていました。そして、巣立ったあとも我々の手からもらったエサを、見ている前でお腹がすいた雛鳥にやっていました。

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家内が朝2階の寝室の窓をあけるとそれを待っていた親鳥が窓枠に飛んでくることもしばしばで、家内はとっても喜んでいました。

ガンとの勝ち目のない厳しい戦いの日々、苦しい状態の家内にとって、この可愛らしいシジュウカラとの心あたたまるお付き合いは本当に慰めでした。

秋の訪れとともに、シジュウカラも来るのが稀になり、家内は昨12月の寒い夜にこの世を去りました。

死んで、星になるとよく言いますが、家内は「超新星になってボカーンと爆発するからね―」と笑って言ってました。でも、派手なことが好きではなかったから、きっと暗めの変光星になって、いつかボクに見つけてもらうのを待っているような気がします。

この間見つけたのがそうだったかもしれません。