muttenz's blog

スイス星空だより

Canon EOS Kiss X7 のリニアリティについて(2)

もう一度復習しますと、今回のANDRTのライトカーブの歪みは測光ソフトや、測光の仕方が原因ではなく、キャノンの受光部がある輝度(それも比較的低い)をこえるとリニアではなくなり、そこの範囲では撮影された星像のフラックスが本来ならあるべき量より少ないということが原因です。

前回AIP4WINで測光したライトカーブを掲載しましたが、その測光の際には比較的明るい比較星 TYC 3998-246 Vmag 8.787 (APASS) を用いました。ANDRTは観測開始時には9.0等ぐらいで測光されていますので、両星ともにリニアリティが成り立つ範囲の外にあったわけですが、差光度はそれなりに(範囲外の部分のリニアリティに従って)測られて、ライトカーブがほぼ対称になったわけです。

それならば、暗い比較星を使ってAIP4WINで測光したらUGEMでの測光のようになるはずです。試してみました。

その結果のライトカーブが下図です。

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Vmag 9.669の星を比較星としてAIP4WINで測光

前回の第一番目の画像、UGEMで測光した結果と同じようなライトカーブが出ました。実際にはこのライトカーブの方が撮影された星像のフラックスを忠実にあらわしていることになります。(細かいことですが、AIP4WINで測光すると時間軸が本来の観測時刻とは全く異なる値が出てきて困ります。ここでは面倒なのでそのままにしてあります。)

 

金田さんが送ってくださったデータでは、ANDRTの近くの8つの星のフラックスやピーク値、カタログの光度値などの関係を調べてくださいました。そのアイデアを頂いて、ANDRT付近の星を明るいものから暗いものまで15個選んで、AIP4WINのSingle Star photometry tool というのを使って観測開始時の頃のフレーム一枚で、15個の星のフラックス、ピーク値、器械等級などを調べました。

これがその15個の星で、約7等から12等でフラックスで約100倍の差があります。観測画像の中央部分で直径30分以内に取りました。(画像全体は2.1度X1.4度)

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ANDRT付近。右が北。AIP4WINでの画像と比べやすいように上下鏡像で下が東。

結果は今までの推論があっていることを示していました。

続きは次回