muttenz's blog

スイス星空だより

Canon EOS Kiss X7 のリニアリティーについて (4)

今まで書いてきたことは金田さんとメールをやり取りして色々とご意見を伺いながらやってきました。

どうもリニアリティが21000付近で破綻しているようで、これだと観測できる星の範囲が狭まるとの危惧に、金田さんがピントをぼかして撮影したらどうかと提案してくださいました。フェースブックでも昨日大島さんが同じように助言を下さいました。

以前どこかでデジカメでの変光星観測にはピントをぼかしてやるとよいと読んだので、実はこの春に食変光星の極小観測を開始した当時一度やってみたことがありました。その時はどうもピントを外し過ぎたようで、UGEMが星像を星と認識してくれず、全観測が無駄になり、それ以来試みませんでした。

一方で、前回のブログの終わりに書いたように、なにかカメラの内部で受光部の特性をV6-V8のグラフのようにしている気がして、Canonの説明書を良く読み返してみました。

そうしたらカスタム機能というページがあり、その中に「C.Fn-3 高輝度側、階調優先」 という項目があるのです。このオプションは今まで使ったことはなく、カメラを買った時のままでいじっていないので、オプションは「しない」になったままでした。「高輝度側、階調優先」という意味が良くわかりませんが、インターネットで調べると、「白飛びしてしまうような場面で明るい部分の細かい陰影を出せる」、とあります。

こんなときどうする!? EOS流機能活用術Vol.05 |CANON iMAGE GATEWAY

ひょっとしたら明るい星でもリニアリティが保てるのではと、このオプションを「する」にしてテスト撮影をしてみたいと考えました。

(このカスタム機能はCanon EOSの全モデルであるようです。)

ところがその頃も天気がずーっと悪く観測できそうな夜がなかなか来ません。12月14日の夕方雲の動きをインターネットで見たら日没後ちょっと晴れ間が続きそうなので、ようやくテスト撮影をしました。その際、ピントをほんの少しはずす、更に少し外すというオプションと、上記の「高輝度側、階調優先」を「しない」、「する」のオプションを組み合わせて、それぞれの組み合わせで3枚ずつANDRTを撮影しました。

ピントを2段階に外したのは星像がもうドーナツ状になっていました。

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ANDRT画像の中心部の拡大。ピントを2段階にぼかしたのでドーナツ状星像!

この画像では右が北、上が東。

ニュートン式反射望遠鏡やシュミカセの場合、ピントを外すと副鏡の影ためにドーナツ状の星像になり、星像のフラックスの重心が星像の円の中心に乗らずに外れてしまい、下手をするとアパーチャーの中心があちこちに飛び回り、きちんとした測光は難しい感じです。

さらに、使っているニュートンはF6で焦点が合う範囲がせまく、ほんの少し外すとすぐにドーナツになるのでその加減も微妙です。ピントをきちんと合わせる時は、明るい星を写野の中央に入れ画像を拡大して、副鏡の影響で出るスパイクがはっきり見えるようにします。その状態から指加減でほんの少しずらすのはなかなか難しく、再現性も正直なところないのが問題です。

さて、ピンボケにしたら明らかに状況が改善されました。

下記のデータとそのグラフは、ピントを少し外し、「高輝度側、階調優先」のオプションは「しない」状態での撮影です。3枚のうちの一枚のフレームでAIP4IWINを使って前回のようにデータを得ました。(前回書き忘れたのですが、星のアパーチャーサイズは3.5で、今回も3.5でやりました。)

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今までのデータの表と同じ配列です。

最初の7.220等の星のピーク値は25000弱ですが、その次の星からは21000以下となり、大部分の星が安全圏内に入りました。

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青い線は一番明るい星を除いた線形モデルの線、赤い線は全星での線形モデルの線

一番明るい星以外の星が青線にかなり綺麗に乗りました。7.220等の星はまだ青線からちょっと外れてやや暗い値となっています。

さて「高輝度側、階調優先」のオプションの効果には実は金田さんも私も半信半疑でした。

続きは次回