周期未知の食変光星V664 Oriを観測中
この食変光星の周期も今まで不明でした。ホフマイスターが発見したのは1942年ですが、戦争中のためかようやく1967年のANに発表されています。以来、調べた範囲では極小観測は見つかりませんでした。
ありがたいことに、ASAS-SNのデータのお蔭で周期が見つかりました。
その周期とVSXに記載の元期で作った位相図です。
同じ要素で作った今月の予報です。
今夜は本当に何週間ぶりで晴れています。風が少々強いのが残念ですが、やっと観測出来るのが嬉しいです。
ちょうど、UT22時前に第一極小があるはずで、UT18時半くらいから観測し始めました。
O - C
昨日、
T(N) = a*N^3 + b*N^2 + c*N + d (1)
の係数を、データからRのnls関数で直接求めようとしたら、エラーで出来なかったと書きました。
そこで、P0を元期での周期、 E0を元期のHJDとして、この式を少し変形します。
T(N) = a*N^3 + b*N^2 + (c' + P0) * N + (d'+ E0)
= a*N^3 + b*N^2 + c' *N + P0 * N + d'+ E0
それから、P0*N + E0を左辺に移行します。
T(N) - (P0 * N + E0) = a*N^3 + b*N^2 + c' * N + d' (2)
すると左辺は有名なO - C になります。
これの右辺の係数はnls関数で出せました。具体的にはどの係数も大変に小さな値です。
a = 1.875027e-12
b = 1.940218e-08
c'= -8.900277e-06
d'= -7.395936e-04
最初の式(1)の係数は、この様にまずO - C のグラフを(2)式の3次曲線で近似し、その係数から求めました。
これらの係数と、P0 = 2.40599, E0 = 2456788.050、上記の(1)の式によってT(N)が計算できまるようになりました。(煩雑なので、得られた係数値を入れた式はいま書きません。)
T(N) = a*N^3 + b*N^2 + (c' + 2.40599) * N + (d'+ 2456788.050)
昨日書いた様にP(N)はこの式を微分して
P(N) = 3*a*N^2 + 2*b*N + (c' + P0)
となります。
N=0(ケプラーの観測の真ん中あたり)では
P(0) = c' + P0 = 2.40599 - 0.0000089 日となります。
周期の変化率PdotはP(N)をさらに微分して
Pdot = 6*a*N +2*b
となります。これらをグラフにしたものは先日載せました。
ところで
T(N) = N * P0 + E0
で描いた直線と観測で得られた曲線との差がO-Cになるわけで、最初のホフマイスターのデータ付近だとこの様に見えます。
観測時刻(HJD)、周期、フェーズなどの関係
今ある食変光星(周期がP)の観測を考えてみます。(時刻はHJDとする)
ある時刻に極小が観測され、それを元期E0にするとその元期からN回後の極小時刻はご存知の T(N) = E0 + P * N
で出せますね。
また、ある時刻Tに対して(T - E0) / P = Nとすると、Nの小数部分はその時のフェーズになり、Nの整数部分は元期から何回目の極小かを意味します。
これからはNを何回目のような離散変数ではなく、小数部分もこみで連続していると考えます。
OQ Gemの極小観測は今までたった5、6回ほどのものですが、ここで、理想的な観測を想像してみます。ケプラーのような、しかももっともっと細かい時間間隔で、連続して行われる観測です。それが出来たとしたら観測時刻とNとの間にこのようなグラフの関係があることになります。
この緑の線は直線に見えますが、実際には5つの点を通る様に3次曲線を作ったのです。理想的な観測があったとしたら、無限の点から出来たなんらかの単調増加の曲線(必ずしも代数曲線とは限りません)があることになりますが、ここでは3次の近似曲線で我慢しましょう。
(データから直接 a*x^3 + b*x^2 + c*x + dの係数を計算させようとしたら、エラーが出て出来ませんでした。ちなみに5つのデータしかないのでせいぜい4次関数の係数しか計算出来ないと思います。)
ここで、この緑の線を直線とみなすとこの傾きは平均周期Pになります。
OQ Gem の様にほんの僅かですが、周期が変動していると、ほとんど直線に見える線がが実際は曲線で、その曲線上の各点で曲線に接線を引くとその傾きはその点での周期になります。
つまり、この曲線を表している関数 f(N) をNで微分すれば、各Nに対してその点での周期を表している関数になります。df(N) / dN = P(N)
OQ Gemの O-C と周期変化
前回のブログでO-Cのグラフを3次曲線で近似したものを載せました。(今回ちょっとだけ変えましたがほぼ同じです。)
下は、この曲線を表している3次式に2.40599*Nを加えた式をNで微分した式の曲線です。周期Pの変化が得られます。
この式をさらにNで微分するとPドットが得られます。
2番めのPの変化のグラフにいつか書いた極小観測から次の極小観測の間の平均周期を書き込み、比べました。結構あって見えますが。。。
これらのグラフや式は、おそらくそれほど信頼出来るものではないと思います。(何しろ基本的にデータ数はたった5つ。)
でも、自分でどの様に考えるか、それを見つけるのが重要でした。
この考え方についてはまた書きます。
OQ GemのO-Cを曲線で近似してみた
二次曲線で近似してみた。
残念ながら最後の三つ、ケプラーの観測から今までの点あたりがうまく近似できていません。
三次曲線でやってみました。
この方が合い方が良さそうです。
V437 Aurという食変光星
OQ Gemは楕円軌道か?の時に書きましたが、EAの場合、円軌道ならば第一極小も第二極小も食の長さがおなじになると書きました。逆に同じではなかったら楕円軌道の可能性があるわけで、最近そんな話があったなぁ、なんの星のときだったかなぁと思いだそうとしたら、わかりました。今年1月にV437 Aurのデータ改訂をVSXに申請した時に、セバスチャンが「食の長さが第二極小の方が長い」という事をRemarksに書くようにと言っていたのです。
V437 Aurの位相図です。
はっきりと第二極小の食の幅が第一極小の方より広いですね!
VSXに登録したデータを書いておきます。
第二極小のフェーズ fi 2は0.394
第一極小の食の幅 w1は0.040
第二極小の食の幅 w2は0.058
OQ Gemは楕円軌道か?の時に書いたこの公式
e*cos(omega) = Pi/2*[(fi 2 - fi 1) - 0.5] = a
e*sin(omega) = (w 2 - w 1) / (w 2 + w 1) = b
これらを使って離心率e、近星点離角omegaの概算値を出してみました。
e*cos(omega) = -0.1665
e*sin(omega) = 0.1837
e = 0.248 omega = -47.8 deg
sin(omega) > 0 & cos(omega) < 0 なので第二象限 omega = 132.2 deg
が求められました。
VSXへOQ Gemのデータ改訂を申請、受理されました!
セバスチャンの休暇が終わったはずなので、この所調査、研究していたOQ Gemの事をメールで知らせて、見てもらいました。すぐにOKの返事が来て、「ただ周期が変化している」という注を付けるようにとのことだったので、それを書き加えて申請しました。
今朝、データ改訂が受理されたとのメールが来ました。
これがOQ Gemのページです。
https://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=14598
細かいことですが、申請のためにいろいろやっていてちょっと気がついたことを書き留めておきます。
先日書いたようにKeplerのフィルターはJohnson VともRcとも一致していません。むしろV、Rc、Icの範囲を合わせたぐらいの感じで、Johnson Vより赤い光でもかなり透過するようです。
https://keplergo.arc.nasa.gov/CalibrationResponse.shtml
その影響が第一極小の極小光度に現れて、食外の光度でケプラーデータとVフィルターの観測データを合わせると、第一極小ではKeplerの方が食がやや浅くなります。(下の位相図参照。赤い点がケプラー、緑の点がVフィルターの観測データ。)表面温度が伴星の方は主星より低く赤い光では相対的に明るく見えるからと思われます。