muttenz's blog

スイス星空だより

KaiV111の周期を求めた

前回の投稿でゆっくり小さな変動をしている変光星、KaiV111を見つけたと書きましたが、6月からの観測フレームでこの星が写っているものを全部測光したデータから周期を求めてみました。一番良さそうな周期は12日あまりで、その周期で作った位相図です。

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変動の範囲が明るめの時と暗めの時があるようです。それぞれの晩で変動しているように見えるのはどちらかというとクリアフィルターでの観測で、比較星との色の違いの影響でしょう。

前回の投稿のKaiV110のライトカーブの図はちょうど12日間で、一番左の青いデータの高さにだいたい右の方のデータが来ているように見えますね。

KaiV110の続き

KaiV110は前回の投稿記事に書いたEAらしい新変光星ですが、その後観測を続けていたらなんと9日後の9月18日にまた極小が受かりました。その間、ほぼ毎日観測できて、下はそのライトカーブです。緑がKaiV110、青はチェック星。

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一番左が初めて極小が受かった晩で、右から2番めが極小が2回めに受かった晩です。青はチェック星の光度から比較星の光度を引いた値をグラフに入るようにずらしたものです。

緑のKaiV110とチェック星がほぼ並行して変動していますね。これは比較星が変動していることを意味します。この比較星をVizieRで調べてみたらすでにASASSNで変光星として見つかっており、タイプはSR、周期は302日!となっていました。302日はちょっと長すぎると思うのですが。。。一方ATLASも同じ星を変光星として見つけていましたが、こちらの方はdubious、周期は2日となっています。とにかく調査することにしてKaiV111としました。

KaiV111はB-Vが1.75と大変に赤い星でGaiaデータによって絶対光度を算出するとほぼ0等の星です。今期、KaiV67の観測は全部クリアフィルターで行ったので、比較星が赤いと、星の高度が下がるにつれて、さほど赤くない星は相対的にどんどん暗く測光されてしまいます。それなので、上のライトカーブの図ではどのデータも右肩下がりになっています。今日の午後中かけて6月から今までの34晩の観測フレームでこの星を測光しました。結果はまだまとめていません。

KaiV110の方も測光しましたら、いくつか極小付近が受かっていました。これについてはまた。

KaiV67の副極小をようやく観測できた! そして新変光星を2つ発見!

KaiV67の周期はほとんど5日なので毎日観測できたとしても5日ごとにほとんど同じフェーズが観測されます。今年6月から観測し始めてようやく副極小がスイスで観測できる時期になりました。昨晩はUT20.568時に副極小の予報でした。下図が昨晩の観測。

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ほぼ予報通りの極小時刻でした。(使っている元期がややおそすぎるのはわかっていますので。)

今期に比較星を以前より暗いものに変更したので写野を以前より少しずらしていたら、2つ新変光星が見つかりました。(なので共に写野の縁ギリギリでした。)VSXにもATLASにも全く記載がありません。

KaiV109です。

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Gaia DR2データから算出したV等級は17.5等です。おそらくDSCTと思われますが、同じように算出した絶対光度がVで4等台というのはDSCTにしては少し暗すぎますが。。。

 

KaiV110です。こちらはEAでしょうね。

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この星のAPASSデータはあって、16.438B/15.488Vとなっていて少し赤い星です。Gaia DR2から算出したV等級は15.62となり、変換式はかなり良さそうです。この星までの距離は3662-8117パーセクとなっていて少なくとも1万光年より遠くになります。

KaiV87の第一極小と、第二極小への減光が受かった

KaiV87は2年前にV583 Cygの観測中に見つけたEAの変光星です。

以前にも書きましたが、VSXには記載なし、ATLASではDubiousの分類で記載の周期は完全にハズレです。しかしおそらく他のサーヴェーでももう発見されていることでしょう。

発見以来の観測で位相図はかなり完成しているのですが、第二極小がはっきりしません。どうもフェーズ0.5より少し手前のようなのです。つまり弱い楕円軌道を描いているようです。

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昨年までの観測による位相図

この位相図の要素による予報では、12日の早朝に第二極小があるはずでした。果たして昨晩の観測で第二極小への減光が受かりました。

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左の方で第一極小が8月9日に受かり、右の方で第二極小への減光が12日早朝受かりました

と同時に新変光星が見つかりました。

VizieRには変光星としては記載されていません。

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昨晩の観測(右の方)でははっきりと周期の短い小さな変動が受かっています。

周期などまだ算出していませんが、ライトカーブからの印象はELLかと思います。

不思議な変化を示すKaiV67

KaiV67についてはこれまで数回報告しています。

簡単に要約しますと、2017年TCP J20100517+1303006を観測していて見つけた変光星で、その後、昨年までの観測で周期はほぼ5日のEAということになりました。

下図で青はClearフィルター、緑はVフィルターによる観測データ。

 

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2019年までの観測データから作成した位相図

昨年はVフィルターで観測したのですが、この星は暗いのでどうしてもスキャッターが多くなります。しかも今まで食の底が受かっていないので、今シーズンはClearフィルターで観測することにして、6月21日に観測を再開しました。予報どおりに7月13日と18日には第一極小が受かりました。(下は第一極小付近の位相図。緑、13日、青、18日)

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7月13日と18日の第一極小の様子 食の底がはっきりと受かりました。

 

そこで位相図を作って見て困ってしまいました。

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今年6月21日から7月18日までの観測データから作成した位相図

位相、0.6-0.7あたりにあるデータ(これは6月21日の観測データなのですが)が極小後の最大光度よりはっきりと暗いのです。比較星が変化したのかと調べましたが問題ありません。ひょっとしてなにかのエラーかと思いながら観測を続けました。

そこに倉敷の赤澤さんが観測データを送ってくださり、ちょうどその問題のフェーズあたりでした。そうしたら赤澤さんのデータも同じように最大光度よりはっきりと暗いのです。

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赤が赤澤さんが送ってくださったデータ

これで、6月21日のやや暗めのデータが何らかの誤りではなさそうと考えられることになりました。赤澤さん、ありがとうございました!

こうなるとこの位相図はちょっと今まで考えていた単純なEAではなさそうで、昨年までの位相図からの変化は明らかです。

先程、昨晩までの今シーズンの観測を全部入れた位相図を作りました。

周期がほぼ5日なので極小ごとに色を変えてあります。同じフェーズ付近が繰り返して観測されていて、ほぼ同じ光度というのがわかるようにデータ点の大きさをかなり小さく取りました。

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今シーズンのこの位相図だけを見せられたら脈動変光星、ケフェイドタイプかなと考えられるのですが、最初に載せたように昨年までの位相図は完全に食変光星のものです。

今シーズン、残念ながら第一極小への減光が全く捉えられていません。

この星がはっきりと減光しているのは2017年と昨年と2回受かっています。

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2017年の減光

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2019年の減光

この減光の様子から脈動タイプ、Rotタイプはありえないと考えられます。

おそらくこの変光星はEAタイプで黒点が今年は非常に活発にできているということでしょう。とにかく大変に面白い星です。ただかなり暗いので条件が良くないと使い物になるデータが得られません。

なお、この変光星はVSX、ASASSNには記載はなく、ATLASでは全く外れの周期でDubiousとなっています。

Neowise彗星 その後

前回のブログ投稿の後、13日早朝はきれいに晴れました。3時半ごろに起きて玄関を開けるとちょうど正面にNeowise彗星がまっすぐ垂直に立って見え素晴らしく幻想的な眺めでした。家からすぐ前の私道に入って撮影したので、早朝に家人に怪しまれて警察にでも電話されないか少々ビクビクしての撮影でした。

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7月13日4時頃 Canon EOS Kiss X7 55mm F5.6 ISO800 4sec

次の日、14日朝も期待したのですが雲がかなり通過してその隙間から垣間見る感じです。撮影する方向はもう分かっているので、今回は玄関の前にカメラを三脚に載せ、自動撮影で毎分一枚セットして28cmの望遠鏡の方にかかりきりでした。後で見たらモミの木の影から彗星が出てくるのが写っていました。

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7月14日3時12分

その後かなり頻繁に雲が襲来。隙間から時々彗星が顔を出します。

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7月14日4時10分 右の方の雲の間に見えます。

この日以降は天気が崩れ、再び彗星を見られたのは先週末の土曜日夕方でした。薄雲があり、今度は方角が北西になってバーゼル市のある方向で空が明るく肉眼では見られず、双眼鏡でなんとか見られる程度。写真も撮影しませんでした。

日曜日、19日夕方、通常の観測準備をして10cmの望遠鏡はもう撮影を開始していました。しかし、ひょっとしたら我が家の庭から見られないかと気付き双眼鏡で探したら今日は割にはっきりと見えます。そこで10cmの変光星観測は中止して、彗星を撮影しようと望遠鏡を向けますが肉眼ではあまり見えないので導入に苦労しました。なんとか導入に成功した頃には彗星は隣家の樹にどんどん近づいてしまいます。それでも成功した数枚の一枚。右下隅はだんだん近づく隣の樹の影。

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7月19日22時40分 10cm反射 F6 Canon EOS Kiss X7 ISO 1600 8sec

昨夕、7月20日はなかなか西方の雲がのいてくれません。日本でもどなたか書いておられたようによりによって東の空はきれいに晴れているのにです。ダラダラと線状曇雲帯が次から次へとやってきました。彗星がもうかなり低くなったころ、ようやく雲の切れ目ができて10cmで数枚撮れました。

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7月20日22時55分 撮影機器など19日と同様

28cmの方はしばらく隣の煙突に邪魔されましたが数枚続けざまに撮れました。

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7月20日23時09分 28cmSC 2秒露光 

ピント合わせをしている余裕がなくボケボケですがお許しを!

日本でも早く梅雨が明けて、天文ファンのみなさんがこの久しぶりの明るい彗星を見られますように、祈っております。

スイスでもNeowise彗星が見えた!

昨夜は24時頃からまずKaiV101を反転する頃まで観測し、望遠鏡を止めるために朝4時に起きました。すぐに二階の北側にあるトイレの窓を開けてNeowise彗星が見えないか、あまり期待しないで見たらなんと向かいのアパートの左に見えるのでびっくり。そこで、まずCYGSSの観測を開始してから自分の部屋に移り(こちらのほうがやや西に位置するのでアパートから彗星がやや離れる)とりあえず窓ガラス越しで手持ちで撮影。

露出時間やらISOなどを考える間もなく撮ったので見栄えはよくありませんが、目では遥かにはっきり見えました。アパートの軒の高さくらいでその左に見えます。

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ガラス越し三脚なしの手ブレ撮影です

 

急いで三脚などを持って近くのサッカー場に行こうかと思ったのですが、どんどん明るくなり始めたので慌てて家の前の歩道から写しました。

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薄明の空が明るくなっています



双眼鏡で眺めても見事ですが、肉眼で十分に堪能できました。名寄の佐野さんのような写真は撮れませんでしたが、とりあえず報告です。