周期不明の食変光星「V563 Her」の正体が分かってきた
ほぼひと月前の5月19日に書いたこの記事の続きです。
でも、以来何もしていなかったわけではありません。観測も倉敷のAさんが何度も手伝って下さり、6月11日には日本とスイスで連続観測を試みました。Aさんは雲が押し寄せる中、苦労しながら観測し第一極小への減光をとらえて下さった。
その結果以下のことが判明した。
1.周期は6.18525日でHoffmeister、CRTS、我々の観測のデータがすべて矛盾なく位相図に載る。
2.元期は今まで仮定していた元期(CRTSの一番暗いデータの時刻)より早い方が良く、Hoffmeisterが観測した2回の極小データの二つ目を元期にできる事が解った。
3.位相図の様子から食には底があるはずで、それはおよそ4.7時間、食全体はおよそ17.8時間継続する。
上記の位相図は新しい要素を用いて作成した。
この食変光星の周期は6.18525日と6日より約4時間半長いので、極小観測の度に観測できる範囲は位相図で言って左の方に少しずつずれていく。11日には極小の底から増光が受かったので、昨17日夜は第一極小への減光から底になるあたりが受かるはずで、減光から底に入る時刻を22.32UT(JDで2457922.43)と計算した。
昨晩の観測
予想計算値もほとんど合っているので、この食変光星の要素はほぼすべて求められたと言えて、位相図もだんだん完成してきた。(ジグソーパズルで一片ずつはめていく感じだ。)
第一極小付近拡大図。
久しぶりにCVを観測
このところずっと自分で調査している星の観測に追われていましたが、ちょっと一段落ついたので久しぶりにCVを観測してみようと、先日VSNET-alertに出ていたMASTER_OT_J132501.0+431846.1というのを観測しました。なんの周期的変動も受からなかったのですが、報告しました。
その後でまた晴れたので観測してもまた変動なしです。そうしたらKatさんが「ATEL #10480にあるようにこれはSNの候補となったので連続測光観測の必要はありませんよ」と注意をして下さいました。へえ、そうかとATEL #10480を読んだら、なんとその中で「Kasaiの観測でearly superhumpがなかったので。。。。」、と書かれていてびっくり。CVじゃなかったのが残念ですが、変動なしの観測も役に立ったようです。
本物のCVを観測したいと、もうあちこちで話題になって観測されているTCP_J18154219+3515598を昨晩は観測しました。これは明るいですね!これはちゃんとスーパーハンプが受かりました。
途中でデータに大きな穴が空いていますが、これは雲が通過してオートガイドがガイド星を見失ってあちこち探し回ってしまい目的星が写野の外に出てしまったためで、3時頃に起きてディスプレイをみたら見知らぬ星の配置になっていてびっくり、望遠鏡を反転するついでにもう一度目的星を導入して朝まで観測しました。
(タイプも周期も不明の)EU Sco
重大な追記です。
今VSXを見てみたらセバスチャンがもうこの星の周期など、ASASデータを使って改定していました。彼が求めた周期も221.5日となっています。僕は星図を見ないでやってしまったのですが、そばに他の星があってASASでーたはその光も測光しているのでセバスチャンはその影響をちゃんと取り除いていました。まずVSXを確認してみるべきでした。。
一応この記事は書いたまま残しますが、タイトルに偽り有りでした。。
今朝vsolj-obs 54019で山本さんがEU Scoについて報告しておられました。
やまもと@岡崎です。 JPEG画像からの測光結果です。 CE AqlとEU Scoは、変光要素、型が不明になっていますが、 ASAS194022-0134.5、ASAS165700-3217.7でライトカーブが確認できます。
ASASのページでEU Scoのライトカーブを見てみました。
これはミラ型ですよね。データをダウンロードしてPDM解析。
周期は221.75日とでました。
前回同じくミラ型DN Ophをセバスチャンに報告した時に、「12等より明るい場合はASASのデータ中MAG_1を使うこと」と注意されたので、今回は二通りのデータセットを作り、12等より暗いところではMAG_0を12等より明るいところではMAG_1の方を使いました。
位相図です。問題はAPASSのデータポイントが周期221.75日だとかなりハズレの感じです。
周期をちょっと長くして223日にするとAPASSはいい感じになるのですが、位相図はややクズレてきます。
どっちを取るべきか、セバスチャンの意見を聞いてみましょう。
ASASでも15等台のデータがちゃんと観測できてますね!凄いです!
KaiV37の位相図は変化している
KaiV37についてこのブログで書き始めた時に、昨年の位相図と今年の位相図がまるで異なると書きました。
もう一度載せておきますと。
今年の
昨年の
一年でこれだけ変化してしまいました。
以前書きましたが、この星のデータがCRTSサーヴェーデータに見つかりました。
上の位相図の周期とはちょっと異なりますが。
データをよく見るとこのCRTSの観測は一年どころか実に2005年4月から2013年6月までの長い期間のものです。一年で変化するぐらいですから、これだけ長い期間ならば当然位相図は変化したはずで、それを一つにまとめたらごちゃごちゃの位相図になっても仕方ないですね。
なかなか難しくてまだ満足な結果ではないのですが、この12年のデータを3期に分けて位相図を作ってみました。(全部を通じて元期は今年の極大時刻を、周期は新しく算出したものです。縦軸の光度は固定してあるので、明るさはそのまま比較できます。)
1.2005年4月から2008年9月です。フェーズ0.0と0.5に低めの極大ができているが、0.5の方が明るい。
2.2009年2月から2012年4月まで。同じくフェーズ0.0と0.5に極大があるが今度は0.0の方が明るくなっている。
3.2012年9月から2013年6月まで。今年の位相図のように典型的RRの位相図。ただ、今年のピークは0.0にあるのに、この時期のピークは0.5にできている!減光の途中のコブがかなり大きい。(フルートの音!)光度が全体に明るくなっている。
1.から2.への変化は山の高さが少しずつ変わっていってできると思われるのですが、2.から3.はその間の観測が抜けているのでしょうか、どのように変化してこのようになるのか思いつきません。
それぞれの状態から次の状態にスイッチされていく時期を観測できたらさぞ面白いだろうと思うのですが、いつそれが起こるかわからないので観測はちょっと難しいでしょう。
KaiV37の変光の波は聞けたらフルートの音みたいかもしれない
ASAS113804-0026.5でフーリエ解析をやって大分なれた感じなので、この所たまってきたこの変光星のデータを解析してみた。2017年のデータのみです。
あまり結果を期待していなかったのですが、大変に面白い結果がでました。
赤で囲った数値を見てください。
F2= 2xF1
F5= 2xF2 = 4xF1
完全にF1の2倍と4倍になっています。音楽で言えばオクターブ上の音と2オクターブ上の音の関係です。(こういうのを倍音と言います。)ここではそれ以上の倍音はでてきません。楽器の音だったら基音にあまり多くの倍音が加わらない音で、例えばフルートなどがその典型と言われます。
インターネットでちょっと探したらこのサイト
音の聞こえ方といろいろな音 | ワイデックスがお届けする難聴と補聴器の総合サイト「みみから。」
にいろいろな音の波形がでていました。
下はKaiV37の波形です。フルートに似てますね!
変光星の変光波形を音に直したらどんな音がするのか、いつかシンセサイザーを使って聞いてみたいものと思っていますが、やり方などまだ全く分かっていません。どなたか詳しい方がいらっしゃったらご教示下さいませんか?
もちろん、周波数が恐ろしく低いので何十オクターブも上げなければ耳には聞こえるようになりませんね。
2016年のデータでも試みましたが、データの質がイマイチでこれと言った関連のある周波数は見つかりませんでした。ただ基音がここの場合のF2に相当する周波数で、それのみが共通の周波数でした。
KaiV37を更に観測
昨晩は一晩中晴れるとの予報で、観測開始してから安心して一旦寝て、望遠鏡の反転のために起きてみたら、写野はまったく別の所。途中で雲が通過したらしくガイドは星を探しまくって別のところに行ってしまいました。それでも一応観測。
位相図です。
昨晩の観測データは緑色です。ちゃんと今年に入ってからの今までの観測データに重なります。周期は0.4日強なので2日経ったらまたほとんど同じフェーズが観測されることになってしまいます。
ひょっとしたらフェーズ0.5あたりに見えるコブが強くなると周期がほぼ1/2の0.204..になるのかもしれません。
昨晩のKaiV37
天気は相変わらず不安定ですが、少し雲の切れ目がありそうなので昨晩観測してみました。案の定、途中かなり長いこと曇られ、雲のせいで終わりも明け方より大分早く来てしまいました。
全くハズレのデータポイントがあるせいでちょっと分かりにくいのですが、これでも変動がはっきり受かりました。ハズレデータポイントを除いて、今年の今までのデータと組んで昨日の周期で位相図を作りました。黒が今までのデータ、赤が昨晩の。
昨晩のデータポイントがちゃんといままでのカーブにのりました!