muttenz's blog

スイス星空だより

V426 LyrにApsidal motion はあるか?

今まで位相図を作るのに使った要素で、Kurochkin、APASS、ASAS-SN、私のMinII観測を一つの位相図にまとめてみました。(その際APASSに合わせてそれ以外のデータの光度を適当量移動しました。)

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これだと、Kurochkinの第一極小がかなり0.0から右にずれています。これが0.0に乗るような周期を探しました。元期は今までどおりで、今までの周期P1=12.688238より少し短い周期P2=12.68725で位相図を作ると、このようになります。

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ここで、見やすくするためにKurochkinのデータだけを表示すると、一昨日のと似たものですが、元期は最近ので、周期もちょっと違います。(下図)

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ここで大事なのは、フェーズ0.5のすぐ右に縦に並んだ二つのデータポイントが果たして、第二極小だったのか、否か?です。

ASAS-SNデータと私の第二極小観測によれば、少なくとも最近は第二極小はフェーズ0.5からかなり外れて0.625付近にあることは確かです。

Kurochkinの頃に第二極小がフェーズ0.5よりわずかに右にあったとすると、この食変光星はApsidal motion を示すことになります。

極小付近それぞれをP1とP2で作成したものを比較のために並べてみます。

フェーズ0.0付近の拡大図です。

下図はP1で。

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下図、新しい周期P2だとASAS-SNデータが少しごちゃごちゃしてしまいます。

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同じように第二極小付近。

P1で作成。

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P2です。

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V426 Lyrはなんと楕円軌道!

昨日のASAS-SNデータの位相図を見て気が付かれた方がおられるかもしれませんね。フェーズ0.7付近でいくつかのデータポイントが連なって下がっています。

これはひょっとしたらV426 Lyrが楕円軌道の食変光星のためかもしれないと思い、その一番暗い点を元期として位相図を作りました。(下図)

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この要素で今月8月の予報を出したら、なんと28日3.33時(UT)と出ました。3.33時UTだとスイスの今の夏時間で5.33時。朝が来てしまうので極小は観測できそうもありませんが、せめて減光でも観測できればと思いました。しかし27日夕方は雲が全天を覆っています。それでも寝る前に一応外を眺めてみたら、なんときれいに晴れ渡っていて満月も煌々と照っています。急いで望遠鏡のカバーを取り、観測開始。変光星はもう子午線を過ぎているので、望遠鏡を反転する必要はありませんからそのまま朝まで寝ました。

朝、6時前に起きてデータを見てびっくり。なんと極小が受かりました!

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予報より約3時間早かったようですが、とにかく第二極小がかなりフェーズ0.5から離れていることを確認できました。これで周期、元期がほぼわかりましたので、これから第一極小をなんとしてでも一度観測しなければなりません。

琴座の周期未知の食変光星

琴座は小さい星座なので周期未知の食変光星も比較的少ないです。

V371、 426、 432、 618の4つががNgaさんから頂いた周期未知の変光星リストで挙げられています。

V371はVSXによってセバスチャンによってSRBタイプの変光星と判明し、食変光星ではないそうです。

先日V432の増光が受かったのはすでにブログに書きました。これで周期がおそらく判明したはずです。

V426を先日来調査しています。

このV426は1960年頃にKurochkinによって発見されましたが、彼は周期を見つけることはできませんでした。(ちなみにV432も少しその後で彼によって発見されました。)VSXにあったリンクをたどると1970年の彼の報告に行き当たるのですが、いかんせんロシア語で私には何もわかりません。(下の図)それでもわかったのはV426に相当する星は下の表の一番右の1589番で、数値は等級-10で、一番左の列はJDということです。こういう表で数ページの観測データがあります。

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さてASAS-SNのデータをダウンロードしてPDMを使って周期を探しましたら一つ有力そうなのが見つかりました。12.688238日です。

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この見つかった周期が本物かKurochkinのデータで確かめることにしました。

彼のデータを手作業でHJD vs Magの表に直し、彼が元期としている値=VSXのepochとこの周期 を使って位相図を作ってみました。

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嬉しいことにKurochkinのデータから見事な位相図ができました。これで周期はまず正しそうです。第二極小らしいデータもあります。

この続きはまた明日。

 

V343 Lac の第二極小を観測  できるはずでした。。。の続き

この時の観測データを昨年の観測データと組み合わせて位相図に入れました。

第二極小付近です。

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たった一年前の観測データとなので、ズレはほとんどありません。でも周期はこの値で良さそうです。

もう少し範囲を広く取りますと。

f:id:muttenz:20180826051956p:plain今回の観測データで消えてしまった部分が実に惜しいです。(極小時刻が正確に出せたのに。。。)食の前の部分にはこの星のDSCT的な変動がはっきり見えています。今回の赤のデータでもフェーズ0.493あたりで少しゆがんでいるようにみえますがやはりDSCT的な変動でしょう。主星がDSCTということになりますか。

食変光星 V432 Lyr

先日、この食変光星の増光を観測できたとブログに書きました。

muttenz.hatenablog.com

この食変光星に行き当たったのは周期未知の食変光星のリストで、一昨年二度観測しました。

2016.06.16.

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2016.06.21.

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見事に無変光で、取り付く島もないので当時はあきらめました。

昨年来ASAS-SN Sky Patrolのデータを利用できるようになって、状況が変わります。

数日前にこの食変光星のことを思い出してASAS-SNデータをダウンロードしてPDM解析をしたらこんな位相図ができました。元期は一番暗いデータポイントを使っています。

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この要素を使って予報を出したら8月20日夜に食があると出たので、急遽観測し、増光を捉えられたわけです。

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この唯一の食の観測データを、ASAS-SNデータ、BAVで見つけたKuchorkinの二つの極小観測などと組んで周期を探してみました。まず12日あまりの周期の半分の6.37807日の可能性があります。(元期は20日の観測のほぼ開始時を使いました。そうすると周期を変化して位相図を作っても20日の観測はいつもフェーズ0.0付近にとどまります。そこで周期を変えてみてKuchorkinの極小がフェーズ0.0に来るような周期を探しました。)

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この周期だと第二極小付近に何も減光が見当たりません。それに第一極小付近を拡大してみるとASAS-SNデータと全部は合わないようです。

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そこで6.37807日の2倍の周期で位相図を作りますと。

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この場合の第一極小付近はこうなってなかなか良い感じです。

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第二極小付近はまだ観測していませんが、ASAS-SNデータではやや浅い食のように見えます。

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この要素で9月の予報を出してみました。n = 0.5は日本でもスイスでも観測不能です。

date   UT            n

2  13.3474  1

8  22.421    1.5

15  7.4947  2

21     16.5684  2.5

28       1.6421     3

 

V931 Ophとその周囲の新変光星 周期の改訂 最後

2016年当時に見つけた新変光星の周期改訂で最後に残ったKaiV43を調べました。

今日このような位相図を作成してVSXに周期改訂を送ったらすぐにOKが来ました。

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本当は後一つKaiV45が近くにあるのですが、今回の一連の観測では写野からはずれていてデータがありません。また来年にでもやってみよう。

このところ続いた好天気はちょっと一休みで最高気温も明日は24度ぐらい。土曜日に至っては20度に達しないそうです。

日本は今年は次々と台風にみまわれて大変ですね。被害が出ないことを祈っています。

V343 Lac の第二極小を観測  できるはずでした。。。

昨年この食変光星を観測し、また倉敷のAさんにも何度も観測していただきました。しかし、第二極小の完全な観測がまだできておらず、しかもこの極小がフェーズ0.5より少し前に来るので、第二極小をきれいに観測することがVSXに周期の改訂などをするためには大事でした。

昨晩、21日の夜25時過ぎにこの食変光星の第二極小があるはずで、時間的にもちょうど良いし天気も上々と、観測するのを楽しみにしていました。

友人宅に招待されていて実際に観測開始は23時頃で、望遠鏡の反転があるまで一寝入りし、反転が極小時刻に近いので反転時刻をしばらく過ぎたあたりで起き、無事に反転して、朝までまた寝ました。

さて朝起きて、ダーク、フラット処理をしてmuniwinでデータを処理しようとしたら、どうしてか観測の前半がありません。これはおかしいと、フレームをナンバーの順で見直して行くと、観測開始の2つのフレームの後はなんと反転後のフレームが入っています。そして反転後の観測が終わった後に、反転前の一部が反転時まで入っています。

しばらく、何が起こったのかわからなかったのですが、どうもこういう間違いをしたようです。

反転時に撮像フレーム数を朝までの観測時間から130枚と設定しました。その時どうしてか、フレームのナンバーをまた戻してしまったようです。なので、反転後、撮像の度に反転前に撮った同じナンバーのフレームは上書きされてしまいました。というわけで130枚反転前のフレームは消えてしまったということでしょう。

これが今回の観測結果です。

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観測開始時の2つの生き残ったフレームの後の空白が悔しいです。。。。この空白が上書きされて消えた部分。そこからが反転前のフレームで生き残ったもの。その後の1:20-1:30が反転による小さめの空白。その後のデータは上書きしたフレームのもの。

ということになります。

上書きされたデータの復元も試みて見ましたがだめでした。寝ぼけてバカな間違いをやってしまった~