muttenz's blog

スイス星空だより

周期不明の食変光星V563 Her の周期を探そう 続き

muttenz.hatenablog.com

これの続きです。

一昨日の夜、久しぶりに晴れました。薄雲がある上に月も明るいので空全体が相当明るいのですが、23時半にあるはずのV563 Herの極小をとにかく観測してみました。ようやく極小時ごろに隣の家の屋根上に出てきたので観測開始。15等台と暗く、空が明るいのでスキャッターはひどいですが、極小後からの増光をはっきりと捉えられました。Hoffmeisterの2回めの極小観測が1964年だったので、おそらく53年ぶりの観測になるでしょうか?2時頃には完全に曇られてしまいました。

f:id:muttenz:20170507163233j:plain

3月に見つけた周期がそれほど外れていないことが、今回の観測で検証できました。これから何度か第一、第二極小を観測して周期と元期をもっと正確に求めることが課題です。周期が6日あまりなので第一極小の次のチャンスは5月12日夜半すぎ。(11日から12日かけて)(第二極小は明日8日夜。天気は悪そう)

ASAS113804-0026.5のケプラーデータがあった!すごい!

セバスチャンからメールでこの星のケプラーデータがあるよと教えてくれました。

全体で80日弱の観測です。

f:id:muttenz:20170505180852j:plain

このライトカーブをパッと見た時には、あ2晩ぐらいの観測だと思ったのですが、80日間の連続観測です。昼も夜もないし、空に雲はないし、こんな観測が出来るとは羨ましいです。

このデータをまずPDMで解析してみました。

周期0.01から0.1の範囲で周期0.02..が出ました。位相図。

追記 これを書いてから考えたら、ケプラーは0.02日ぐらいの間隔で観測しているのでその周期が出てしまったようです。

f:id:muttenz:20170505181448p:plain

周期1日から10日の範囲でPDMで解析してみました。6.97..日という周期が出ました。

これはASASデータでも見つかっていた周期で、その位相図は、上とほとんど同じものができました。

f:id:muttenz:20170505181536p:plain

ケプラーデータを今度はフーリエ解析してみました。

最初に出て来るスペクトルです。

f:id:muttenz:20170505181922j:plain

ここからF15までやってみました。僕が見つけた周期とかなり合っています。

ところどころ違うのもありますが。

f:id:muttenz:20170505182309j:plain

ここまでやってライトカーブに計算したカーブがどのくらいの合うか見てみました。

f:id:muttenz:20170505182436j:plain

見事ですね!これの凹んだあたりを拡大してみると。

f:id:muttenz:20170505182417j:plain

もう嫌になってしまう。すごい精度です。ただ連続測光という点ではこれはかなりまばらで、0.02日ぐらいの間隔です。

Period04を使ったフーリエ解析でPTS (periodic time shift) オプションを使う効果

昨日PTSを使った場合に見つかる周波数が変わったと書きましたが、グラフにしたほうがその効果、変化がわかりやすいかと思い作成しました。

周波数対amplitudeのグラフというのはライトカーブのスペクトルに当たるわけですね。

PTSなしの場合のスペクトル。

f:id:muttenz:20170505050210p:plain

PTSありの場合のスペクトル。

f:id:muttenz:20170505050244p:plain

10c/d以上の部分だけ拡大すると。

PTSなし。二つの周波数が同じ強さで突出しています。

f:id:muttenz:20170505050531p:plain

PTSあり。一つだけが突出しています。

f:id:muttenz:20170503193118p:plain

違いがはっきりわかるでしょうか?

ASAS113804-0026.5の「Periodic time shift」を使用したフーリエ解析

f:id:muttenz:20170501233916j:plain

すでに先日ブログに載せた最初のフーリエ解析の結果です。

F9の16.3359がF4の16.27595とたった0.06弱しか違わないので、F9はperiodic time shiftのためでリアルではない可能性があるということで、expert modeでPTSの公式を使ったフーリエ解析をしました。

その結果を載せます。

f:id:muttenz:20170503192626j:plain

F1からF8までの周波数は上の表とほとんど変わりませんが、amplitudeでは例えばほとんど同じ強さだったF2とF4が、F4は強くなり、F2は弱くなり差がはっきりしました。

F17以降が新しく計算しなおして見つかった周波数です。

周波数が10以上、周期にして0.1日以下で見つかった周波数とamplitudeをグラフにしました。強い順にF4 F2 F13 F19 F17 F18 F20 F22 です。

f:id:muttenz:20170503193118p:plain

周波数10以下、周期にして0.1日以上のグラフです。圧倒的にF1が強いです。

f:id:muttenz:20170503193224p:plain

PTSで見つかった周波数は上記の表中一番上PTSFとある0.0088 c/dで、周期にして113.5日です。この周期が物理的に何を意味するのかはわかりません。

下は表の全部の周波数とamplitudeをグラフにしたものです。

f:id:muttenz:20170503194512p:plain

Period04のexpert mode

Osmさんが早速エキスパートモードでPTSに切り替えるやり方を教えて下さいました。どうもありがとうございました!

その結果は次の機会に載せることにして、昨日のフーリエ解析の結果から作った位相図を載せます。2番めからの位相図、どれも同じように見えますが、周期と振幅が異なるのです。

F1のdetrended これが出来るのを長いこと待っていました!やっと3シーズン目でできた。観測した回数は延べ29回です。

f:id:muttenz:20170502164248p:plain

F2のdetrended

f:id:muttenz:20170502164550p:plain

F4のdetrended

f:id:muttenz:20170502164627p:plain

F7も十分のamplitudeがあります。

f:id:muttenz:20170502164801p:plain

 

ASAS113804-0026.5の多重周期(フーリエ解析)

今年の観測データだけでフーリエ解析をやってみて、ある程度やり方に慣れたし、意味のありそうな多重周期が見つかるようなので、思い切って2015年、2016年のデータも付け加えてPeriod04でフーリエ解析をしました。

大変に嬉しい結果が出ました!

数字ばかりでちょっとおもしろくないかもしれませんが載せてみます。

f:id:muttenz:20170501233916j:plain

まずF1です。なんと周期がASAS-3データからPDM解析で得られた周期3.483日に近い値3.485日がようやく出てきたのです。これでこの周期は確定でしょう。

そしてDSCTの多重周期がいくつか見つかりました。カッコ内は周期と振幅です。

F2(0.05804 d.0.0082mag)、F4(0.06144 d.0.0082mag)、F7(0.07546 d.0.0036mag)

F2とF4の振幅がほぼ同じなので時期によってはどちらかの周期が強く見えることがあるのでしょう。

問題はF9、周波数は16.33590668 /d.です。

ちなみにF2の方は 16.27595494 /d.です。

その差は僅かに0.06 /d弱!

Period04のマニュアルにこういう時は「注意すること」とあります(P60)。

このように近接した周期が見つかる場合は周期は基本的には変わらずほんの僅かに周期的にフェーズがずれていることがあるそうです。(例えばDSCTが連星で周期的に見かけ上フェーズがずれるような場合。)そういう時はPTS(periodic time shift)のオプションを使うと解決できるとあります。

ところがそのオプションを使うためにはexpert modeにしてそのオプションを選択するとあるのですが、expert modeにしてもそのオプションが出てこない!どなたかご存知ですか?とりあえず、今日はここまで。

 

ASAS113804-0026.5の多重周期がようやく見つかった!の続きです

今年はこの星を3月27日から昨晩までで14回観測しました。

f:id:muttenz:20170430184023j:plain

青が昨晩のデータです。全変動範囲が0.1等余りというかなりみみっちい変動なので良い精度のデータを得るのが難しいです。前回書いたようにDSCTの多重周期は二つ見つかってそれはほぼ確定しましたが、上記のグラフで見えるような長期の変動の周期がなかなか確定しないのです。緑と青のデータが得られる前のフーリエ解析では6日あまりの周期が強かったのですが、緑と青のデータが入ったら3.5日ぐらいの周期の方がピークが高くなりました。

以前ブログで書いたことがあるのですが、この星のASAS-3のデータでは周期3.48日ぐらいの周期で位相図を作るとそれらしいものが出来るのです。赤がASASデータ。

f:id:muttenz:20170430184816p:plain

ところが、今年の観測データのフーリエ解析では最初は6日の周期が強く、どうしたらよいかわからなかったのですが、ここ2日で3.5日の周期の方が強く出るようになり、ひとまずホッとしています。ほぼ3.5日の周期だと同じ位相を観測できるのが1週ごととなり、3月29日(水)に観測できた極大になかなかもう一度お目にかかれません。(以来水曜日の観測がない!)

とにかく最新のフーリエ解析の各周期でのdetrendedの位相図を作りました。

一番長い周期でしかも変動幅が一番大きい。

f:id:muttenz:20170430185410p:plain

今年、強い方のDSCTタイプの変動。

f:id:muttenz:20170430185527p:plain

もう一つの周期の変動。

f:id:muttenz:20170430185637p:plain

ただし、この3つの変動周期が見つかった後でも、この変光星の長い周期の変動がいったい何に起因するのかはわかりません。

下はフーリエ解析の結果です。F3(周期20日)のamplitudeが0.008等と意外に大きいのが何故かわかりません。比較星がこのぐらいで変動しているのだろうか?ただ近くに明るい星がないので検出は難しいです。これからの課題です。

# fourier analysis with data from 2017.03.27.-04.29
# after detrend
#       frequency /d          epoch                     period d.
F1 0.2852005550     2457838.66401     3.5063045371703
F2 17.2310145000   2457839.95527     0.0580348881954
F3 0.0495912869     2457823.66822   20.1648326250634
F4 16.2706233000   2457839.93370     0.0614604604607
F5 2.0073496600     2457839.85747     0.4981693124655

F6 13.2523318000   2457839.91602     0.0754584185705
F7 16.4524196000   2457839.92750     0.0607813333426
F8 0.3950465000     2457838.17884     2.5313475755386
F9 1.2242824600     2457839.71450     0.8168049716240
F10 14.5979604000 2457839.94855     0.0685027204211
F11 19.5425877000 2457839.94013     0.0511702961425
F12 3.6493509900 2457839.80934       0.2740213267346
F13 16.9572163000 2457839.97008     0.0589719434080
F14 12.2552746000 2457839.90324     0.0815975188349
F15 8.0163635500 2457839.93139       0.1247448414437