muttenz's blog

スイス星空だより

11月22日、KaiV87の第一極小が受かった

昨日書いたように、一応この新変光星の元期と周期が推定出来たのでその要素で予報を計算して見ました。

それによると11月22日18.696UTに第一極小がまたあることになりました。11月に入ってから天気が悪くあまり期待は出来なかったのですが、運が良いことにその日夕方から数時間だけはだいたい晴れて、観測が出来ました。後半は雲の通過のためスキャッターが多くなりましたが、それでも極小とわかるデータが得られました。

f:id:muttenz:20181205050631j:plain

食の中心もほぼ予報通りなので、仮に決めた食要素がそう外れていないことがわかります。もちろん、この周期の半分とか2倍とかは考えられますが。

第一極小のVデータが得られたので、RcデータをVデータに合わせるために移動するのはやめて、VとRcのデータを分けた位相図を作りました。

f:id:muttenz:20181205051104p:plain

第一極小付近の拡大図です。

f:id:muttenz:20181205051147p:plain

こうなると周期に関して決定的なことが言えるためには第二極小付近の観測がほしいです。

久しぶりにEAタイプの新変光星を発見 続き

先日書いたように倉敷の大島さんがV583 Cygを何度も観測してくださっているので、大島さんに今まで観測されたフレームにこの新変光星KaiV87が写っていないかお尋ねしましたが、残念ながら写野の外で、データはないとのことでした。

そこで回数は少ないですが、自分の観測フレームを再チェックしてみましたら、減光したらしいデータが2回受かっていました。一つは極小らしいが暗すぎて食のところは穴があいているの、もう一つは減光しかかって雲のため中断しているというものでした。

それでも11月17日のと合わせて計3回の減光を重ねられる周期をペランソを使って探し、見つかった周期は4.779日で、位相図を作りました。それらしいものが出来ます。11月17日のデータはRcフィルターによるものでしたが、Vフィルターのデータに移動して合わせたものです。

f:id:muttenz:20181203201545p:plain

 

久しぶりにEAタイプの新変光星を発見

今年の11月はあまり天気に恵まれず観測回数は少なかったです。それだけに新変光星発見は嬉しかったです。

V583 Cygのデータ改訂のために9月頃から観測を開始して無事先日改訂出来ました。

この改訂のために倉敷の大島さんが頑張ってVとRcの観測をしてくださって素晴らしい位相図を作ってくださいました。これについてはまた日を改めて。

しかし11月半ばごろには大島さんの観測データに第一極小のRcデータがまだ無かったので、11月17日ちょうどV583 Cygの第一極小がありスイスでRcフィルターで観測しました。

f:id:muttenz:20181201195214j:plain

この日は娘のパートナーのチェリストがチューリッヒでソロを引くコンサートがあり、夕刻18時には家をでなければチューリッヒ行きの電車に間に合わないという状況で、薄明時に観測を開始。突然の瞬間的な停電があって、望遠鏡のそばのと室内のコンピュータがストップという事故もあり、もう焦りました。18時5分前頃にこの星が子午線を超えるので、急いで望遠鏡をフリップし、うまく写野に入れられて、家を出ました。雲が来るかもしれない天気予報なのでオートガイドは切ってイチかバチかほったらかしで観測しました。ただ、コンサートの休み時間にスマホで見たらそれほど星が動いていないのでちょっと調整するだけですみました。

その晩は結局朝方まで観測できて、全部のフレームから変光星探しをしたら、なんと一つEAらしいのが受かりました。

f:id:muttenz:20181201194736j:plain

VSXを見たら記載されていません。でももうASAS-SN かWISEが見つけているだろうと両カタログを見ましたが、ここにも記載されていません。久しぶりにEAの新変光星発見です。

早速ASAS-SNデータをダウンロードしてPDMを解析しましたが、周期が見つかりません。このところは新変光星を見つけても周期は大体ASAS-SNデータからあっさりとわかることが多いのですが、久しぶりにEAの周期探しのパズルと言うことになりました。

 

海王星の発見

2日前に海王星を発見した望遠鏡のことを書きましたが、その中で発見者ガレのことをベルリン天文台長と書きましたが間違いで、当時はエンケが台長でした。訂正いたします。ガレは彼のもとで16年働いて、1851年にブレスラウに移ってからそこの天文台長になったとのことです。ガレはなんと98歳まで生きて、1910年に亡くなっています。終生、「自分は海王星発見者ではない、発見者はルベリエだ」と言っていたそうです。海王星発見のエピソードについては皆さん大体ご存知だと思うので、ルベリエやアダムズのことなどは省きます。

ちなみに手元の天文ソフトGuide 9.0でこの発見当夜1846年9月23日夜の海王星の位置を表示させてみました。

f:id:muttenz:20181128004842j:plain

ルベリエの計算した予報位置は正確にわからないのですが、下の当時の星図(元期は1800年のようです。)に書かれている予報の場所は上図の青の矢印のあたりで、約1度の距離離れていたことになります。両図の星の配置を見比べてみてください。

左下付近の拡大図です。

f:id:muttenz:20181128012124j:plain

f:id:muttenz:20181107113719j:plain

Guide 9.0で海王星の場所を表示させてびっくりしたのですが、土星がそのすぐ南、約1.3度ぐらいのところにあったはずです。

以前ブログに載せましたが、下は海王星の写真です。一年あまり前に海王星の衛星のトリトンがUCAC4 410-143659という恒星を掩蔽するということがあり、その数日前に撮った写真です。

f:id:muttenz:20181128010627j:plain

当時のブログです。

muttenz.hatenablog.com

海王星を発見した望遠鏡

ブログ、長いことお休みしてしまい申し訳ございません。

この11月、一年前のように娘のコンサートを聴きにミュンヘンに行きました。そして、またドイツ博物館へ。なつかしいです。

f:id:muttenz:20181107105314j:plain

2回めなので天文部門はかなり端折って、おもに他の部門を見学しましたが、いくつか天文関係のものも。

海王星を発見した望遠鏡をみました。昨年はスペクトル特別展のために片付けられていて見られなかったのですが、今年は展示されていました。フラウンホーファーの死後3年ですが、フラウンホーファーの工房で1828/29年に制作、1829年にベルリン天文台に納品されました。2枚レンズのアクロマート、口径244mm、焦点距離4320mm。そして1846年にベルリン天文台長のガレがルベリエの計算に基づいて新惑星を探し、その晩のうちに見つけたのがこの望遠鏡を使ってだそうです。

f:id:muttenz:20181107113512j:plain

その時に使われた星図。(コピーです)左下の書き込みが予想位置と発見位置らしい。

f:id:muttenz:20181107113719j:plain

これは同じくフラウンホーファーの作ですが、対物レンズをダイアモンドで半分に切り、それをマイクロメーターと連動させて2つの星の間隔を測定できるようにしたものだそうです。この構造はヘリオメータと言ってこれより前には太陽の直径を測るためにつくられ、使われたとのこと。それをフラウンホーファーはずっと精密なものに仕上げ、これよりもっと大きな器械でベッセルが1838年に恒星の年周視差を発見しました。

f:id:muttenz:20181107114245j:plain

屋上の日時計の展示のところで面白いのを見つけました。

二本の紐がすりガラスの上に太陽の光で十字の影を落とすわけですが、その交点から時刻を読み取るというもの。

 

f:id:muttenz:20181107135542j:plain

f:id:muttenz:20181107135551j:plain

屋上から有名なミュンヘンの景色。

f:id:muttenz:20181107143549j:plain

一番上の階にはプラネタリウムがあります。

f:id:muttenz:20181107143253j:plain

相変わらず、ツアイスらしいのですが、もう何代目だか、ずいぶん小さいのでびっくりしました。「地球から宇宙へ」という番組を見ました。ESOの撮影画像をいろいろと組み合わせて見せてくれました。ただ今のプラネタリウムって、ちょっとCGっぽくって、きれいな星空を普通に見せてくれるのは流行らないようですね。(この夏、日本で見たのもそうでした。)

f:id:muttenz:20181107140123j:plain

とにかくドイツ博物館というのは科学、技術に関する展示がすごい量で、2回めでもまだ見ていないところが残ってしまいました。

 

 

ようやくV343 Lac のデータ改訂をVSXに登録できた

この食変光星は2016年冬から観測し始めて3シーズン目になります。この8月に第二極小を観測しようとしてドジをして半かけの極小観測になってしまいました。

muttenz.hatenablog.com

この食変光星の周期は一応VSXやGCVSには載っていて6.471914日となっています。BAVには一つだけAngererの極小観測がありますが、O-CGatewayには周期の記載はありません。Krakowの予報サイトにはGCVSの要素で予報が出ています。

観測開始当初はVSXの値が正しいと思っていろいろと考えています。古いブログの記事を読み直すとそのあたりが今になってみると面白いです。

食変光星V343 Lacの続き - muttenz's blog

2016年から観測を続けてきてこの星の本当の周期はVSXなどの周期のほぼ2倍が正しいとわかりました。

昨年からは倉敷の赤澤さんが観測を手伝ってくださって日本スイスの連携で極小への連続観測が出来ました。

muttenz.hatenablog.com

今シーズンにもお手伝いいただき、データもたっぷり溜まったので先日来VSXにデータの改訂をすべく再測光を含め数日かかって整約しました。昨日ようやく改訂を申請、昨晩受理されました。

https://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=16932

これが全体の位相図です。青が赤澤さんの、緑が私の観測データです。

f:id:muttenz:20181103185227p:plain

第一極小付近。(データを絞ったのでちょっとスカスカです。)

f:id:muttenz:20181103185311p:plain

第二極小付近です。明らかに極小がフェーズ0.5から外れて0.49ぐらいです。たった0.01と思いますが、周期が13日弱ですのでそのズレは時間にすると13日の1%、0.13日=約3時間となり、観測で完全にわかります。

f:id:muttenz:20181103185551p:plain

古いRicAのデータが少々ずれてますが、これがApsidal motion によるものかはわかりません。感じとしては観測の誤差でしょう。BAVのAngererのデータは第二極小のど真ん中。

第一極小には底はありませんが第二極小の底は平らに見えます。皆既食なのでしょうか?2つの極小の光度差は0.01Vとほとんどないのでほぼ同じような星と思われますが、少し大きさに差があるのかも。

なお、この変光星の食外にあきらかにDSCTの変動がしばしば見られますが(上の2つの位相図で食の開始前のあたりに見えます)、あまりはっきりしないこともあります。第一極小の食ではDSCT的な変動が見られるようですが、第二極小の食は見られないようで、DSCT変動は伴星のほうかもしれません。とにかくoEAということでこれについてはこれからの解析、観測を待ちましょう。

V464 Cas の極小を再び観測中

muttenz.hatenablog.com

昨年12月にこの周期未知だった食変光星の食を観測してVSXにデータの改訂を申請して受理されました。10ヶ月ぶりに極小を観測して、周期の精度を上げられるかもしれません。

只今極小を過ぎたところです。

f:id:muttenz:20181031064422j:plain

昨年発見したKaiV77も健在です。

f:id:muttenz:20181031064916j:plain

下は昨年発見当時のライトカーブ。

f:id:muttenz:20181030184620j:plain