HZ Gem 付近の変光星
もうすでに何度か報告していますが、2月の観測をまとめてみるとちょっと面白いライトカーブが見られます。
周期は0.824日で、観測できるフェーズが少しずつフェーズで後ろに(位相図で右に)ずれていきます。
周期は0.435日 一晩の観測で全位相の約3/4受かりました。
周期は1.55日で、ちょうど4周期分が見えていることになります。第二極小は残念ながらスイスでは観測できませんでした。
山本さんが発見されたミラ型の新変光星
2月26日にVSOLJ-obsに山本さんがVSXなどにまだ記載されていない新変光星を報告されていました。そこに書かれているASAS-SNのリンクを見たらもう、明らかなミラ型の変光星。ASAS-SN Sky Patrolから1300日分のデータをダウンロードして周期解析をしたら周期もあっさりと見つかりました。
ASAS-3やAPASSのデータも加えて、その周期で作成した位相図です。
極大の時期はフェーズで前後しているようですが、極小の時期の方がほぼ一定のフェーズで起こっているように見えます。
この周期の3倍の周期で位相図を作ると極大光度が次第に明るくなっていく過程が見られて、これも興味深いです。
VSXに山本さんが発見した新変光星として登録を申請しました。
GaiaのGmag, BPmag, RPmagからVmagを得る
今までのところかなり暗い星の光度データで一番信頼されているのはAPASS (AAVSO Photometric All Sky Survey) かと思いますが、これも16等ぐらいからデータが無い星もいっぱい出てきます。
Gaiaのデータが発表されてから、そこに記載されているGmagだの他の光度のデータがVだのBだのいわゆる標準光度システムに変換できないかと思っていました。
今日は半日かけてそれに取り組みました。
まず論文探しです。
そうしたら、こういう論文がありました。
GAIA-C5-TN-UB-CJ-041
そこにはいろいろと詳しくフィルターのことやら説明がされていますが、必要な変換のための、色と色との関係式も出てきます。
この表は、一番左の列のフィルターによる光度差を、(V - I ) の多項式で表わしたときの、式の係数を表にしたものです。
しかし、実際にGaiaのデータからVを計算する場合にVはもちろん、Iもわかっていないわけで、当然 V - I もわかっていません。
VizieRに行ってGaiaのデータでG, GBP, GRPなどは見つけられるのでG - GBPや G - GRPは決まります。
そこで3段目や4段目の関係からV - Iを求めれば良いのですが、これだと3次方程式の解を求めなければなりません。3次方程式の一般解は面倒くさいのでニュートンの近似法を使い、このプロセスをR言語のスクリプトにして、いろいろと試してみました。
例えば、このところMisV1408のすぐそばにある星のVが欲しかったのですが、普通の星表では見つかりません。
Gaiaでは
Gmag=16.5458/BPmag=17.3054/RPmag=15.6741とあり、
BPからはV-I=1.470 V=17.028、
RPからはV-I=1.436 V=17.011
が得られました。
V - Iがちゃんと関係式を満たすかどうかは確かめました。GBPを使うのとGRPを使うのとで場合によっては結果にV等級で0.05等ぐらいの差は出てきますが、大体はそれほど大きな差はなく、リーズナブルな値と思われます。上の例ではその差はわずか、0.017等でした。
これを使って17等台より暗い星のVが一応求められるようになりました。
HZ Gem の位相図
これの続きです。
2月27日に観測したHZ Gem のデータを今までの位相図に書き加えました。
きれいに重なりますが、その後のフェーズ0.5の前あたりの緑のデータはちょっと外れている感じです。それと元期が少し前すぎるかな?位相図全体が右にずれているようです。これは第一極小の極小観測をしなければはっきりしません。
天気がだめだ。。。
FY Ori のデータ改訂をVSXに申請、無事に受理されました
2月にこの変光星を観測して、周期や変光範囲などを決めることができたのでVSXにデータの改訂を今日申請しましたが、すぐに受理の返事が来ました。
https://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=23251
ASAS-SN Variable Stars Database が発表されて、命名されていても今まで周期が不明だった変光星でもずいぶんと周期、変光範囲がわかりました。しかし場合によってはASAS-SNの観測でも周期が見つからなかったり、比較的近くに明るい星があったりして観測できなかったり、未だに命名されていながら周期不明の変光星もあります。
FY Oriの場合はASAS-SN VSDB で周期は3.6794106 d.となっていて基本的には十分な精度の周期です。しかしそのデータと、ある晩の極小観測を組み合わせると、もっと精度を上げて周期を決められます。下の位相図で減光、増光のカーブが観測のカーブと重なるような周期を探します。
そうやって今回出した周期は3.67935 d.です。(小数点以下の桁数が多ければ精度が高いわけではありません。)
2月14日のブログに書いたように、Hoffmeisterによる1944年のこの星の極小観測の記録が残されています。
それを位相図に入れると青い点のようになります。彼の観測は写真等級なのですが、かなりV等級に近い感じで、カーブも私の観測のライトカーブに並行です。ただ、ずいぶんずれています。彼のライトカーブがフェーズ0.0からの増光カーブに乗るような周期を探すと、今度はASAS-SNのデータポイントが緑のカーブに乗らなくなるのです。このことはHoffmeister発見の頃から周期が変化したことを意味すると思われます。この場合、周期は発見時より少し長くなってきているはずです。
2月11日から27日まで毎晩観測できた!
この2月には実に17夜連続で観測できました。それも今夜28日夜は曇で連続観測も終わりを告げ、これから天気予報の出ている範囲では全部曇りか雨。。。。
このような好天気はスイスでは本当に稀です。友人が皆私が睡眠不足にならないか健康状態を心配してくれました。
昨夜はHZ Gemをまた観測しました。3つの変光星はどれも予想通りのライトカーブを見せました。得られている周期はどれも概ねあっているということです。
昨晩、26日夜は KaiV91 を観測
このKaiV91は2月12日にFY Oriの近くで見つけた新変光星です。
これについてその後書いていませんでしたが、あの頃11日から続けて14日まで4日連続で観測できました。
12日に極小、13日にも少し浅い極小が受かっています。つまり第一極小から第二極小が一日あまりなので、周期はその2/3だろうと思って位相図を作りました。
これでもまあVSXに登録できるぐらいと、自信を持っていました。
このところHZ Gemの近くで見つけたKaiV92 93にかかりっきりでしたが、そちらがほぼ解決したので、念のためにKaiV91の観測をしようと思い、この要素で作った予報によれば昨晩は第二極小があるはずなので、昨晩観測しました。ところが。。。。
変動がほとんどないっ!!えーっ、こんなはずはと、本当にこの星だろうかと何度も見直したり、ダークを作りなおしたりしましたが、大して変わりません。こうなったら、予報が間違えています!今回のデータを入れてPDMをやり直し。結果としては上に書いた続けて観測できた第一極小から第二極小の間には全く極小はなく、周期はほぼ2日とわかりました。この要素で作った位相図です。スカスカになっちゃった。。。
ただし2日連続で第一極小、第二極小を観測できたので、この2日あまりの周期より長い周期は、楕円軌道でもない限り、ありえません。周期が2日に相当近いので今月中にはもう第一極小も第二極小も観測できず、3月下旬にならないとチャンスは来ません。
がっくり。。。この位相図だと、EAですね。