muttenz's blog

スイス星空だより

アンティキティラ島の器械 Antikythera mecanisumus

バーゼルにある古代博物館Antikemuseum Baselで「沈んだ宝物」der versunkene Schatzという展示が行われている。

The sunken treasure - Antikenmuseum Basel und Sammlung Ludwig

1900年頃海綿をとる漁師によって偶然発見された、紀元前一世紀にギリシャのアンティキティラ島のすぐ近くで沈んだローマの船から発掘されたものが展示されている。

これらの品々がギリシャの国外で展示されるのはバーゼルが初めてだそうです。

これらの発掘品の中で世界の注目を集めたのが「アンティキティラ島の器械」という、天文のための器械です。2000年の間、海水の中で風化したので極めて脆いため、さすがにこれはバーゼルにも来ませんでした。でもそれに関する説明や再現された器械が3種類展示されてました。

もう2ヶ月前になりますが、1月にオランダの天文学者で宇宙論の専門家だが趣味でこの器械の研究をしている人がバーゼルで講演をしたので、僕は病気で体調は良くなかったがどうしても聞きたかったので聞いてきました。

いまでは多くの人の協力でかなりの部分が解明されているとのことで、大雑把に言えば太陽と月の動きを表す器械で、日食、月食の予報ができ、サロス周期やメトン周期を表すことが出来る。人によっては惑星の動きも表示できたと考えるようだ。

この器械が生み出されるには、まず大変長期にわたって正確に月の運行が観測されて、いろいろな周期がわかっていなければならなかった。そしてそれを表現するための歯車を組み合わせて動かすメカニズムを発明しなければならなかった。最後にそれを実際に歯車などを加工してつくり上げる技術がなければならなかった。

考えただけでも気が遠くなりそう。もうただただこれを作り上げたギリシャ人に脱帽です。

オランダの天文学者が教えてくれたことで驚いたのは、ある歯車の軸がどうみてもわざと偏心して作られていて、なかなかその意図がわからなかったが、月の公転角速度が一様ではないのをその偏心によって近似したのだと判明したそうです。すごいですね。(下のyoutubeのビデオクリップで38分07秒からその説明があります。)

日本語でも検索するといろいろいっぱい出てくると思いますが、例えばBBCの番組がyoutubeで見られ、X線によるトモグラフィーで器械の内部が見られるところ(19分30秒辺りから)はもうゾクゾクっとします。(他にも良い番組が沢山あります。)

www.youtube.com