V445 Aql のデータ改訂をVSXに登録
V445 Aqlという食変光星は1933年にドイツのゾンネンベルク天文台のAN (Astronomisceh Nachrichten)に掲載され、それ以降のも含めて全部で11回の極小観測があります。(BAVのサイトで見られます。)
周期はGCVSでは、9.42531日、VSXでは9.4248日、O-C Gatewayには周期の記載はありません。どうも周期が少し外れているために観測されなくなったようです。
そこで調査を開始しましたが、もう7年前のことで、4年前のブログでも2回書いています。その後またほったらかし。。。。
V445 Aqlという食変光星 - muttenz's blog
V0445 Aql の観測データ(2011年) - muttenz's blog
これではいけない、と今回登録までなんとしてでもやるぞと決心しました。
大雑把に復習いたしますと、まずASAS-3のデータを使って位相図を作成しました。元期周期はVSXに記載の周期です。結構きれいな位相図ができます。第二極小もちゃんと受かっています。ただ、第一極小のフェーズが0.0からやや右に外れています。
そこで第一極小がフェーズ0.0当たりに来るように、そして上記の11回の極小観測がほぼ均等にフェーズ0.0の周りに分布するように周期を探しました。
VSXの元期とこうして得られた周期から予報を作り極小観測をしました。青が私の観測です。
ここにはAPASSのデータも赤い色で入っていて、私の食外の観測データとよくカーブがあっています。それに比べASAS-3のデータはそれより少し明るすぎます。これは変光星の近くに星があってその光がASAS-3測光に混ざり込んでいるからです。その分を差し引いて見ると。。。
このようにうまく全部が重なります。ASAS-3のデータもまんざらではないですね。
この位相図と要素でVSXのデータを改訂し、昨日受理されたとのメールが来ました。
https://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=1584
下は第一極小の部分を拡大したもので、完全に皆既食でほぼ平らですね。
この皆既食、約10時間あまり継続します。
ちなみに今ではASAS-SNデータベースのデータがあるのでそれも入れようかと考えたのですが、時間的に近いものよりも遠いもののほうが周期がより細かく得られるので、ASAS-3データを使いました。(ASAS-SNデータでも同じような位相図が得られましたが、煩雑になるのでいれませんでした。)
2011年にやりかけてずっとほったらかしにしてあったけど、ようやく7年ぶりに登録できました。(観測はすべて2011年です。)良かったら上記の古い記事も読んでみてください。
V583 Cyg の続き
前回のV583 Cyg の続きです。
この星の観測記録がAAVSOにないだろうかとたまたま考えて探して見たら3人が観測していました!大部分は食外の観測でしたが、2016年8月3日に観測したデータが食の途中まででした。
今まで予報などに使った要素で、そのデータを位相図に入れたら第二極小への減光と出ました。黒いデータポイント。
私が観測した光度とずいぶん違うものだ、この分だとだいぶ光度を移動しなければならないかな、などと考えました。
しかし、今まで仮定していた周期の半分だったらどうだろうと思い付き、その位相図を作ってびっくり。第一極小付近のみですが
見事に繋がります!
このように深い食で皆既食だったら、同じようなカーブが第二極小にも来ることはありえません。これならこの周期が正しいのでしょう。それならばと、AAVSOのデータ全部を入れて位相図を作ってみました。
他のAAVSOのデータもまんざら無駄ではないようです。
一つ気になるのはちょうどフェーズ0.5にあるデータで、周りの食外光度とほとんど違いがありません。第二極小が受からないのか、どこか少しずれたフェーズにあるのか、一度第二極小を観測してみなければ、なんとも言えませんが、とにかくこれで一歩前進でした!
周期未知の食変光星、V583 Cyg の食が受かりました
食変光星V583 Cygは、はっきりはしませんが第二次大戦中にSonnenbergで発見されたようで、元期は1943年11月1日となっています。その後の詳しい観測はなさそうで、周期なども未知でした。
ASAS-SN Sky Patrolのデータを使って周期を探しました。ただ、この星は15等台ぐらいでしかも直ぐ側に11等台の星があるので、ASAS-SNのデータはほとんどこの隣の星の明るさです。それでもなんとかそれらしい周期を見つけて位相図を作りました。二つのカメラが撮っていたのでそれぞれのデータから二つの位相図を作成しました。
この位相図の要素で予報を出すと、昨晩の夜中すぎ、26.232UTに第一極小があるはずでした。
予報が当たるか当たらないかわかりませんが、観測してみたら受かりました!
減光から食の底が受かっています。
きれいに晴れたものの風が大変に強いのでフードは外しました。満月過ぎたばかりの月が煌々と照っていて、食の底のあたりでは星の高度も低くスキャッターは多くなりましたが、とにかく食の予報があっていて嬉しかったです。食の底では16等ぐらいです。
astrolibRでhelio_jdが誤った値を出す原因がわかった
まあ、こういう間違いの原因を私が探す義理は全くないのですが、どこか気持ち悪いのでastrolibRのスクリプトをよく見てみました。
原因はその中で使われているxyz()のスクリプトでした。
それも割に単純な間違いです。
スクリプトの最後の方でxyz座標をいろいろな三角関数を足したり引いたりして出すところです。
オリジナルのスクリプトでは
x = 0.99986 * cos(el)
-0.025127 * cos(g - el)
+0.008374 * cos(g + el)
+0.000105 * cos(g + g + el)
+6.3e-05 * t * cos(g - el)
-----------------
この後もずらずらと三角関数の項が並ぶのですが、
これをRで計算すると
> x = 0.99986 * cos(el)
> -0.025127 * cos(g - el)
[1] -0.007243908
> +0.008374 * cos(g + el)
[1] -0.007354704
> +0.000105 * cos(g + g + el)
[1] -0.0001032314
> +6.3e-05 * t * cos(g - el)
[1] 0.0002700628
> +3.5e-05 * cos(g + g - el)
[1] 2.896541e-05
このように最初の行の後はそれぞれの三角関数の値は計算されますがそこで完結し、最初の項にはそれらの値が足されたり引かれたりせずに全くそのままです。
ここは各三角関数の項の前のプラスやマイナスを前の行の最後に持ってこないと計算が継続されないです。このように
x = 0.99986 * cos(el)-
0.025127 * cos(g - el)+
0.008374 * cos(g + el)+
0.000105 * cos(g + g + el)+
6.3e-05 * t * cos(g - el)+
3.5e-05 * cos(g + g - el)-
-----------------------------------
あるいはずらずらと長ーい1行にするか。
x = 0.99986 * cos(el)-0.025127 * cos(g - el)+0.008374 * cos(g + el)+0.000105 * cos(g + g + el)+6.3e-05 * t * cos(g - el)+3.5e-05 * cos(g + g - el)- -----------------
このようにスクリプトをなおすとパイソンで書かれたスクリプトと全く同じように動きます。
これでも、このスクリプト、プロの人が書いたのでしょうか。。。。
astrolib.py をラズベリーパイで動かせた!
パイソンは全くやったことがなくて、ラップトップにも入っていません。
一年くらい前にたまたまラズベリーパイを見て、こんな小さなものでもコンピューターか!と買ってはみたものの、あまりいじる時間もなしで動くのを確認したぐらいでほとんど使っていませんでした。ただ、中にパイソンがインストールされているのは知っていました。
先日いろいろの手段でJDtoHJDを計算させて比較しました。
その後、加藤さんが、パイソンのastrollib.pyのhelio_jdが正しい結果を出すか、誰か試してほしいと、書いておられたので、パイソンのパの字も知らないド素人なのですが、イチかバチかラズベリーパイでできるかやってみました。
ラズベリーパイのインターネット接続がどうもうまく行かないので、必要なスクリプトをまずラップトップにダウンロードしてからUSBスティックに入れ、そこからラズベリーパイに移して、パイソンで動かしました。スクリプトが一つ一つがうまく読み込まれていくのに感激です!
そしてhelio_jdを動かしたら、動いた!
結果はOKでした!
4回の試みのうち下の3回が先日やった「日付、赤経、赤緯」で、赤経、赤緯はdegreeで入れます。前回の結果はHJD-JD = 0.005681 / 0.005869 / 0.002706でしたが、算出させたらピッタリ同じ値でした。
この結果から判断すると、パイソン版のastrolib.pyは大丈夫で、R版のastrolibRに移植する時に何か書き間違えたのでしょう。
KaiV85 をもうVSXに登録できた!
これの続きです。
去る9月17日に発見した新変光星、KaiV85を今日VSXに登録申請したら、すぐにOKが来ました。これは速い!わずか3日で登録完了。
https://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=624653
周期もEBで短いので全位相はすぐに撮れました。15.3-16.4等と少々くらいですがAPASSのデータが意外とたくさんあって、それもだいたいうまくライトカーブに載せられました。
KaiV85は記念すべきVSX登録50個目の新変光星でした。
Theo Jansen の Strandbeest をご存知ですか?
天文とも音楽とも関係のないテーマです。
一週間くらい前に3 SATテレビの番組で紹介されていて、大変に驚きました。
芸術、物理学、工学、解剖学などの多様な要素を組み合わせた素晴らしいものだと思います。ちょっとLeonardo da Vinciのような?あるいはどこか天空の城ラピュタに通じるような?
NASAから問い合わせがあったそうです。金星での探査機は太陽電池が使えそうもないし、どんな地面かわからないので、そこで動かせる機構を開発してもらいたいとのことです。